[ オピニオン ]
(2019/5/9 05:00)
資金使途を環境に配慮した事業に限定した融資「グリーンローン」を活用する企業が増えている。会社の成長と環境を意識した経営の両立に向け、新しい資金調達手段として認知され始めた。社会持続性に配慮するESG(環境・社会・ガバナンス)への対応が重要な経営課題となる中、環境関連ファイナンスを前向きに活用したい。
環境面を重視する金融商品では債券「グリーンボンド」が知られている。その一方で、融資に関しては国際的なガイドラインが従来なく、2018年3月にローンマーケット協会とアジア太平洋地域ローンマーケット協会がグリーンローン原則を共同策定し、融資ルールが定まった。
急速に市場が発達しているグリーンボンドは、起債にあたって一定のボリュームの金額が必要など、企業によっては取り組みが難しい。一方、グリーンローンは債券発行に比べて設定しやすいのが特徴だ。シンジケートローン、プロジェクトファイナンスなど融資手法も拡充されており、企業や自治体で活用の検討が進んでいる。
名古屋鉄道は、中部地区で初めて、グリーンローンを活用して50億円を調達した。三菱UFJ銀行など計6行とのシンジケートローンで、調達資金は名古屋駅に計画するオフィスビルの建設事業費に一部を充てる。金利優遇はないとしており、名鉄では環境にやさしい企業としてイメージ向上を期待する。財務評価だけでなく、ESGへの取り組みにも関心が高い投資家の注目を集めたいところだ。
社会の持続可能な発展に貢献する取り組みは、大企業だけでなく中堅・中小企業、大学、自治体へと広がっている。事業範囲は環境、エネルギー、社会インフラ、食料など多岐な分野にわたり、なおかつグローバルな課題も増えている。
これらの取り組みは事業規模が拡大傾向にあり、従来中心だった公的財源で、すべてを賄うことが難しくなっている。ビジネスによる課題解決を促す仕組みの一つとして、民間資金の適切な導入を考えたい。
(2019/5/9 05:00)