[ オピニオン ]
(2019/8/21 05:00)
山口フィナンシャルグループ(YMFG)が、首都圏の人材を地方に呼び込む取り組みを加速させている。人材紹介を手がける全額出資子会社YMキャリア(山口県下関市)を設立、10月から事業を始める。地方に活躍の場を求める首都圏の人材に声をかけ、基盤である福岡・山口・広島3県の取引先に人材を仲介し、副業・兼業希望者も募る。地域経済の活性化につなげるユニークな取り組みだ。
山口FGは、2018年度に経済産業省・中小企業庁が行った地域企業の人材支援「TSUNAGU(つなぐ)プロジェクト」に参画し、8カ月間で23件の実績を上げたことから事業を本格化させる。金融グループの強みを生かし、中小企業の課題分析から求人、職場環境の改善までトータルで支援する。経営人材は将来の幹部候補として採用、もう一方の副業・兼業人材はITやマーケティングなどの能力を持つ人材を環流させる。
成約事例を見ると、電子商取引(EC)サイトを活用した食品メーカーの販路開拓など多岐にわたる。山口FGの吉村猛社長は「地方に足りない人材が首都圏には多い。副業・兼業を許可する大手企業は130社近くあり、優秀な人材を呼び込んで地域活性化につなげたい」と意気込む。
U・Iターンプロジェクトなど都市の人材を地方に呼び込む取り組みは以前から行われている。ただ、これまでは呼び込むことに力点が置かれ、その後のフォローはほとんど行われていないのが実情だ。山口FGは金融グループの強みを生かし、資金負担が大きい人材獲得前後のフォローから、ミスマッチの確認、継続的な事業支援などまで手がけることで、中小企業の成長支援を請け負う。
人口減少と都市部への若年者流出により、地方の中小企業は深刻な人材不足に直面する。余力がある首都圏から地方へうまく環流できれば日本経済全体が活性化する。初年度売り上げ目標は4000万円程度とわずかだが、地域がにぎわえば資金需要も増えるはずだ。山口FGの新たな取り組みに期待したい。
(2019/8/21 05:00)