[ オピニオン ]
(2019/8/22 05:00)
二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて企業などが費用を負担するカーボンプライシング(CP、炭素の価格付け)の活用を話し合う環境省の委員会は、論点を整理して1年の議論を終えた。温暖化対策や経済成長のためにCPを導入するのか、新たなコスト負担を避けるために導入を見送るのか、政府による決断を求めたい。
同省は2017年に別の有識者会議でCP導入について検討していた。今回の委員会は18年7月に発足し、導入の可否が問われていたが、委員からは「以前の会議と同じ」との批判が出ている。
CPはCO2排出量に応じて課税する「炭素税」、排出量の上限を超えた企業が排出枠を購入して超過分を埋め合わせる「排出量取引」がある。いずれも排出が企業のコストとなるため排出削減が促される。欧州、韓国、中国など45カ国がCPを運用する。日本の温室効果ガス排出量は1990年より増えており、CPが温暖化対策の切り札になると期待する声がある。
経済効果も見込まれる。コスト負担を避けたい企業による省エネ型設備への投資が活発化する。CO2削減に貢献する技術開発も促されるため、温暖化対策に積極的な企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」が導入を求めていた。
一方、業界団体は現状の地球温暖化対策税やエネルギー関連税が炭素税に当たると主張。「これ以上のコスト負担は受け入れられない」と反対してきた。委員会は結局、中間整理をとりまとめて終わった。
CPをめぐる議論は長い歴史があり、原田義昭環境相は「そろそろ結論を出さなければいけない」との認識を示す。また「予算、税制において環境省がどのような選択をすべきか、一番大事なところ」とし、2020年度の概算要求に盛り込むことに含みを持たせた。一方で、他省や自民党とも相談が必要とし、判断については明言を避ける。
結論が出ないと、企業も投資計画や事業戦略を立てにくい。議論は尽くされており、政府が決断を下す時だろう。
(2019/8/22 05:00)