[ オピニオン ]
(2019/8/27 05:00)
経済産業省は2019年度中に「循環経済ビジョン」を策定し、経済政策としての資源循環を推進する。自国産業の競争力向上を狙う欧州の政治的な思惑もあり、循環経済をめぐるつばぜり合いは激しくなることが予想される。政府は日本の競争優位性を維持できる基盤整備を、産業界は今後の潮流を見据えた経営戦略の構築を急ぐべきだ。
日本は3R(リデュース、リユース、リサイクル)が社会に浸透し、資源の有効活用や素材転換、省エネ技術で先行する。しかし、そのアドバンテージに安穏としていられないほど、世界の変化はめまぐるしい。
欧州連合(EU)が打ち出した新たな概念「サーキュラー・エコノミー」は、環境問題の枠内にとどまっていた資源の有効利用を、社会や経済の仕組みそのものを変革する経済政策へと昇華させた。しかも、これをデジタル技術によって実現しようとしている。IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能(AI)の活用は、効率的な生産や製品・サービスの利用形態の変化を通じて、資源の有効利用を促進すると考えられているからだ。
デジタル技術を通じた社会変革で思い起こされるのは、ドイツが推進する「インダストリー4・0」や日本が打ち出す「ソサイエティー5・0」。各国がしのぎを削る産業高度化へ向けた取り組みに、循環経済の要素が加わるインパクトがある。
日本はこうした大局的な視点に基づいて戦略を打ち出しているだろうか。国の施策はもとより、ビジネスにおいても、個々の製品技術や環境マネジメント開発に注力するにとどまらず、資源制約社会の到来やデジタル化といったうねりに対処できているか、やや心もとない。
国際標準化機構(ISO)ではサーキュラー・エコノミーマネジメントに関する国際標準規格の策定が検討されている。標準化戦略によって日本企業が不利益を被らないよう、政府には積極的に議論に参画することを期待する。そして企業は循環経済を経営の中核に据え、新たな一手を打ち出してほしい。
(2019/8/27 05:00)