[ オピニオン ]
(2019/8/29 05:00)
地球温暖化が加速するなか、エアコンなどの空調機の需要が世界で拡大している。空調機産業にとって好機到来ではあるが、温暖化ガスの排出拡大という見過ごせない側面もはらんでいる。温暖化による猛暑対応のための空調機の普及が、温暖化を加速させるという事態を回避するために、日本の企業が果たすべき役割は大きい。
今年の夏は世界的に猛暑に見舞われた地域が多かった。欧州では気温が40度Cを超えるなど、命の危機に見舞われる事態となっている。これまで空調機を設置していない地域でも、設置が加速する見通しだ。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の空調機の需要は今後30年間で現在の3倍に増加するとの予測を2018年に公表した。
空調機の普及は地球温暖化に関して二つの課題がある。電力消費を抑制するための省エネ性能向上と、冷媒の主流である代替フロン(HFC)をより温暖化係数の低いものに転換していくことだ。これらの対策がなければ温暖化ガスの排出量は世界で大幅に増加する恐れがある。
そんな中、空調機世界最大手のダイキン工業は、同社が保有する温暖化係数の低い冷媒「HFC―32(R32)」を用いた空調機の特許について、これまでの無償解放に加え、事前許可も不要にすると表明した。これにより世界の空調機メーカーは複雑な手続きなしにR32冷媒の空調機を作れるようになる。
短期的には敵に塩を送る戦略となるが、R32の普及を一気に加速し、世界で温暖化係数の低い冷媒への転換を促すことで、長期的には同社の空調機事業の拡大につながると見ている。
ただ空調機の普及に伴う温暖化ガスの排出量を抑制するためには、まだまだ対策は不足している。HFCの排出削減目標を掲げたモントリオール議定書のキガリ改正では、先進国だけでなく新興国も高い排出削減目標が義務づけられている。
日本の空調機業界が築きあげてきた高度な省エネ技術、より温暖化係数の低い冷媒の開発をさらに推し進め、世界の温暖化抑制に貢献してもらいたい。
(2019/8/29 05:00)