社説/新規求人の減少 製造業、原材料費の高騰に懸念

(2023/8/30 05:00)

製造業の求人数の減少が懸念される。7月の新規求人は6月に続き、2カ月連続の2ケタ台の減少率だった。減少は5カ月連続。原材料費や光熱費などの高騰が製造業の雇用に影響している。円安基調による物価の高止まりが懸念され、製造業は生産性向上などで対応したい。政府・与党が9月に打ち出す物価高対策を含む経済対策の効果も見極める必要がある。為替への十分な目配りも求めたい。

厚生労働省が29日に発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は1・29倍で、前月比で0・01ポイント低下した。低下は3カ月連続。新型コロナが感染法上の5類に移行し、経済活動がほぼ正常化した中、サービス業などが求人を増やす半面、製造業や建設業が求人を減らすなど、業種間で大きな温度差がある。

業種別の新規求人(原数値)を見ると、情報通信業が前年同月比5・2%増、宿泊・飲食サービス業が同2・1%増と増えた一方、製造業は同11・4%減、建設業は同8・0%減だった。中でも製造業は、6月の同11・0%減に続く2カ月連続の2ケタ台の大幅な減少だった。求人を出そうにも出せない状況が長引く事態は回避したい。

物価の高止まりに加え、人件費の高騰も求人を手控える要因とみられる。厚労省によると6月の現金給与総額は前年同月比2・3%増と増えた。約30年ぶりの高水準だった春闘の影響が出始めているとみられる。

製造業の中でも中小企業は実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化しており、台所事情は厳しい。原材料や人件費の高騰分を取引価格に上乗せする価格転嫁を推進し、人材確保を後押ししたい。政府は6月に決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)に、価格転嫁対策を講じると盛り込んだ。実施を急ぎたい。

政府・与党が9月にまとめる経済対策は、物価高対策のほか成長投資を促す施策も盛り込まれる見通しだ。製造業の成長力を引き上げ、求人をためらわない環境の整備につなげたい。編成予定の補正予算案は財政規律に配慮することも欠かせない。

(2023/8/30 05:00)

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