人と生きる ロボット新時代(5)ABB社長・中島秀一郎氏

(2023/11/14 05:00)

安全・生産性の両立目指す

―「2023国際ロボット展」の見どころは。

「ラインアップを拡充した協働ロボット『ゴーファ』シリーズやデジタル空間でリスク分析ができる安全機能『セーフ・ムーブ』などを訴求する。人工知能(AI)を活用し、複雑形状や光沢のある加工対象物(ワーク)でもピッキングできるアプリケーションにも注目してほしい」

―ロボットの事業環境をどう捉えていますか。

「自動車向けは電気自動車(EV)化もあって受注が好調だ。ABB全体として3年程前から自動車向け事業の再構築に取り組み、塗装といった得意な領域に焦点を当てる戦略を実行してきた。その成果が数字として表れ始めている。自動車向けロボットの稼働台数が増えたことで、各種サービスの利用も比例して増え、全体の収益性が向上する好循環が生まれている」

―日本市場でのロボットの受注状況は。

「設備の老朽化による更新投資もあって、23年は自動車向けが非常に好調だ。大型案件のほか、塗装工程のサイクルタイムなどを短縮できる技術『ピクセルペイント』の受注も決まった。車以外では食品向けでもパラレルリンクロボットなどの引き合いが好調だ」

―協働ロボットをめぐる競争環境が激しくなっています。

「既存のロボットで自動化できる領域は現時点でも自動化されている。では、協働ロボットがこれだけ市場から注目される理由は何か。それは従来の産業用ロボットでは埋められない潜在的な自動化ニーズが多く、そのニーズが表面化し始めたことが原因だろう」

―そうしたニーズにどう対応しますか。

「現時点で自動化されていない用途は技術的にも難しいことは事実だ。当社は国内2カ所にロボット導入検証施設を構える。そこを通じて安全性と生産性を両立できる協働ロボットのアプリケーションの確立などに取り組みたい」

―生産現場へのロボット導入で人の働き方も変わりますか。

「ロボットは単純作業を減らすことが得意だが、単純作業に価値がないと考えることは資本主義的な尺度だと思う。ただ『3K(きつい・汚い・危険)』と呼ばれる仕事に価値はあるが、人の体に無理が生じやすい作業はロボットで代替すべきだ。こうした作業にロボットが浸透すれば、生産技術部門にもっと人が必要になる。当社は教育用ロボットも展開しており、ロボット活用を計画できる能力を持った人材育成にも貢献したい」(増重直樹)

(2023/11/14 05:00)

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