現代の名工(2)左官・吉村誠氏 鋳物工・荒川正行氏

(2023/12/13 12:00)

左官

企業の垣根越え後進育成

吉村興業・吉村誠氏

左官工事を手がける吉村興業(東京都中野区)社長の吉村誠さんは、住宅内装から文化財修復まで取り扱う。後進育成にも力を注ぎ、同業8社による任意団体「東京左官技能者育成協会(東左育)」の技術講師のほか、技能五輪競技委員も務めるなど業界に貢献してきた。

高校卒業後、父が経営する吉村興業に入社。最初は材料運びなどの下働きで「嫌々働いていた」と振り返る。転機は入社5年後に経験した一戸建て住宅の内装装飾現場。施主や工務店担当者が左官技術の高さに驚いてくれたことに「うれしくなった」。仕事のモチベーションが向上した。

29歳で全国左官技能競技大会で優勝し、30代に入り大型の現場も担当した。大型テーマパークでは指揮者として現場入り。約2年間モルタルなどで地形や造作物を作った。35歳から徐々に現場を離れて管理に移り、42歳で東京駅丸の内駅舎の内部ドーム調査を担当。素材や工法を決め、施工に携わった。「素材の産地や加工方法・時期まで文献を見ながら決めた。一番強く意気込みを持って臨んだ現場だった」という。

49歳で社長に就任。現在まで後進育成に取り組む。同業他社の新入社員研修や技術フォローアップ研修をする東左育で、他の講師とともに造形や装飾を中心に技術を指導する。日本左官業組合連合会では国家資格の左官技能士取得に向けた講習も担当する。「技能継承を進めたい」と決意を新たにする。

鋳物工

改善に終わりなし

クボタ 京葉工場・荒川正行氏

クボタの京葉工場(千葉県船橋市)はダクタイル鋳鉄管の基幹工場の一つ。世界で唯一、最長9メートルのダクタイル鉄管を製造する技術力を有する。それらの技術を支えるのは、鋳造業務歴40年以上の鉄管製造課シニアエキスパートの荒川正行さん。安定的な生産性と品質の維持に欠かせない「ウェットスプレーコーティング遠心力鋳造」を熟知し、時代とともに変化する水道管に合わせて、最適な設備や鋳造条件の確立に尽力してきた。

鋳造工程では鉄を溶かした1300度Cの溶湯を金枠に流し込み、高速回転で円筒状の鉄管を作る。高温による金枠の摩耗や変形などを防ぐため、耐火性のある水溶液を金枠内面に吹き付ける「ウェットスプレーコーティング」が鉄管の品質を左右する。「溶湯の状態や外部環境の変化を見分け、水溶液の配合や吹き付ける角度などの条件を一つひとつ整えてきた」。

一方で、水道管の形状や材料は日々変化している。それに合わせて一度確立した条件も日々見直さなければいけない。地道な作業を繰り返すが、「改善に終わりがないことが鋳造の魅力であり、自分でやってみて納得したい」思いが原動力となっている。

現在30―50代を中心に14人の後進育成に取り組む。個人の考え方を尊重し、経験を重視することを心がける。「自分で経験し、納得して理解してもらうことを大事にしてほしい」と、後輩たちにメッセージを送る。

(2023/12/13 12:00)

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