国産「特殊重要部品」の道開く 日本エアロフォージ、航空機向け大型鍛造品の能力増強

(2024/5/17 12:00)

世界でも有数の、加圧能力5万トン油圧鍛造プレス機を有する日本エアロフォージ(Jフォージ、岡山県倉敷市、中西修一社長)。国の経済安全保障政策のもとでのサプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化策を受け、出資元の材料メーカー各社とともに、航空機向け大型鍛造部品の生産能力増強に乗り出した。航空機部品の新しい需要を捉えることはできるのか。

  • 日本エアロフォージ本社工場の5万トン鍛造プレス

2023年10月、Jフォージの中西社長は首相官邸で行われたフォーラムに出席。岸田文雄首相ほか政財界の面々に人材確保やエネルギー安定調達への支援が必要と訴えた。

中西社長が官邸に呼ばれたのは、同社の能力増強が経済安全保障による国内投資促進策の象徴的な事例だからだ。国は23年8月、経済安全保障推進法に基づくJフォージの供給確保計画を認定。この計画で国は、Jフォージの生産能力増強に対して2分の1、最大約13億円を助成する。

Jフォージは助成を受けて5万トンプレス機の生産性向上を進めるほか、上工程の加熱炉と下工程の検査装置を増強する。28年度には、22年度比6倍の生産規模を目指すという。

同社の持つプレス機の加圧能力5万トンは国内最大。世界でも6番手につける超大型機だ。時に5メートル以上の大きさになる航空機向け鍛造部品の製造には、こうした超大型プレス機が不可欠。5万トンを超えるプレス機を持つのは米・仏・ロシア・中の4カ国に限られていたが、13年にJフォージのプレス機が稼働したことで日本でも航空機向け大型鍛造品を作れる体制が整った。

  • 鍛造を手がけるチタン合金製のジェットエンジン部品

こうした航空機向けの鍛造部品は「特殊重要部品」と呼ばれ、エンジン重量の約6割、機体重量の約3割を占める。製造するには航空機などのメーカーの認証が必要になる。Jフォージが認証を受けて製造する部品は数十種類に上る模様だ。

コロナ禍で、18年をピークに急減した生産量も22年には底を打ち、需要の急回復が見込まれる状況に。そこに加わったのが22年2月のロシアのウクライナ侵攻。ロシアのVSMPOアビスマは7万5000トン水圧プレスを保有し、特にチタン合金の素材や鍛造品では世界トップクラスのシェアを持つ。ロシア・ウクライナ戦争以前、ボーイング向けでは3割以上、エアバス向けでは5割以上のチタン部品のシェアを持っていたと言われる。戦争以降西側各国のメーカーには、代替品をどう調達するかという課題が突きつけられている。

国はJフォージに加え、同社の出資元で鍛造母材の供給元でもある神戸製鋼所やプロテリアルの能力増強にも助成する。一連の支援策には国内勢をVSMPOアビスマに代わる航空機部品の有力メーカーに育てる狙いがある。経済産業省は「航空機の部品に係る安定供給確保を図るための取組方針」で、30年以降にグローバルサプライチェーンで全体の2割以上を供給することを目指すとする。中西社長は「ギアを上げて増産に取り組み、期待に応えていきたい」と話す。

(2024/5/17 12:00)

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