ヤマウチマテックス・エンジニアリング、3Dプリンターでチタン製人工骨幹

(2024/5/22 12:00)

  • チタン加工のノウハウと3Dプリンターを活用し、日本人の患者に合った医療機器を開発・製造する

チタン加工を手がけるヤマウチマテックス・エンジニアリング(福井市、山内隆嗣社長)は、医療分野の製品開発に力を入れる。金属3Dプリンターを活用したカスタムメイドの上腕骨用人工骨幹で2022年に医療機器の承認を取得。23年に発売し、初めて患者に使用した。今後さらなる実績作りを目指す。チタン製の医療機器は海外製品が主流とされる中、国産の医療機器でアンメットメディカルニーズ(未充足の医療ニーズ)に応える。

福井県は眼鏡の生産地として知られる。同社も切削や伸線といったチタン加工技術で眼鏡の部品を製造。さらに航空機分野など広い領域で製品を提供し、技術を高めてきた。加工技術の強みを活用する新たな領域として医療分野に乗り出し、15年に金属3Dプリンターを導入した。

チタン製の医療機器の代表的な製品としては人工関節がある。整形外科領域で多く使われる医療機器だが、既に海外企業を中心に大手が高いシェアを握る。同社3D積層開発室の杉山美弥子リーダーは「国内ではわが社しかいない、というニッチな領域を狙うのをコンセプトにした」と説明する。

そこで着目したのが、がん領域だ。がんの転移で骨の切除が必要となる場合がある。上腕用のカスタムメイド人工骨幹は患者に合わせて製造し、切除部分の上下をつなぐことで肩関節を残すことができる。

開発グループの渡部拓也リーダーは「3Dプリンターだけでは製品は完成しない。切削や表面肌の加工といった、チタン加工のノウハウが重要となる」と強調する。カスタムメイド人工骨幹は患者のコンピューター断層撮影装置(CT)画像を基に設計し、約2週間で納品可能だ。これまで培ってきたチタン加工技術がこのスピード感を支えている。

今後は骨盤用や鎖骨用に加え、小児用の製品の開発を視野に入れているという。杉山リーダーは「利便性を学会でアピールし、さらなる実績作りや開発につなげていきたい」と力を込める。

(2024/5/22 12:00)

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