[ オピニオン ]
(2017/7/3 05:00)
「全国安全週間」が今年も始まった。労働災害による死亡者数は、2016年は過去最少となった半面、製造業に限ると大幅に増えている。3月に発足した「製造業安全対策官民協議会」で、新たな安全対策手法の検討が始まっており、早期の取りまとめと現場への普及を進めてもらいたい。
全国安全週間は1928年(昭3)以来、第二次大戦中も中断することなく行われ、今年で90回目を迎えた。この間、労働災害は着実に減少し、厚生労働省によると、16年の死亡災害は前年比44人減の928人と、2年連続で1000人を切った。
ただ、製造業の死亡災害は177人で、前年比10・6%増と増えた。中央労働災害防止協会によると、年初に鉄鋼業で死亡災害が多発したのに加え、旋盤や工作機械などへの挟まれ・巻き込まれが増えたのが原因だという。製造業全般で災害が増えることが懸念される。
事態を重くみた厚労省と経済産業省は、日本鉄鋼連盟、日本化学工業協会、日本自動車工業会など主要団体とともに、官民協議会を創設した。リスクアセスメントの実施方法や設備点検基準の共通化、安全対策を講じることによる効果の分析などを検討し、11月に神戸で開かれる全国産業安全衛生大会までに一定の結論を出す見通しだ。
製造現場は合理化や世代交代に伴い、トラブルの経験が豊富なベテラン人材が不足する。非正規・派遣社員の増加やアウトソーシングの拡大により、現場に十分に習熟していない人材や協力企業も増えている。主要設備の経年劣化が進み、災害発生のリスクも高まっている。現場対応力の維持、強化は危急の課題であり、ぜひとも実りある議論を期待したい。
一方、小売業や社会福祉施設、飲食店で、労働災害が増えているのも特徴だ。全産業で高齢化が進む中、転倒や腰痛の増加が目立つ。熱中症による死傷災害が依然として発生しているのも課題だ。適切な温度管理や休憩時間の設定、水分・塩分補給など、組織ぐるみで対策に取り組みたい。
(2017/7/3 05:00)