[ 科学技術・大学 ]

始原生殖細胞にヒト独自の機構 京大がiPS細胞で発見

(2017/10/6 05:00)

  • 研究結果のモデル図。マウスと人では分化に必要な遺伝子や発現のタイミング、シグナル伝達が異なる(京大提供)

京都大学大学院医学研究科の斎藤通紀教授と京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の小島洋児特定拠点助教らは5日、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いて、卵子や精子の元となる始原生殖細胞でヒト独自の機構を発見したと発表した。

従来、研究のモデルだったマウスとは異なる運命決定(将来分化する器官・組織の決定)機構を解明。生殖細胞の発生・分化や形成異常による疾患、不妊などの研究が前進するとみられる。

研究グループは生殖細胞に関わる可能性のある遺伝子が欠失したヒトiPS細胞を作製した。始原生殖細胞への分化で遺伝子発現の変動を追跡し、6種類の遺伝子の機能を特定。発生に必須の遺伝子や発現順序でマウスとの違いを解明した。

ヒトの始原生殖細胞発生に必要なSOX17遺伝子の転写にEOMES遺伝子が必要と判明。マウスで不可欠なT遺伝子はヒトでは分化に関与しなかった。始原生殖細胞への分化を確定するBLIMP1遺伝子の発現維持に、マウスでは運命決定の終盤で現れるTFAP2C遺伝子が事前に必要なことも判明。各遺伝子が始原生殖細胞への移行強化に加え、神経や内臓など他の組織への分化を防ぐ機能を持つこともわかった。

成果は米学術誌「セル・ステム・セル」に掲載された。

(2017/10/6 05:00)

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