[ ロボット ]
(2018/12/4 05:00)
産業用ロボット「MOTOMAN―MLT1700」
【最大限に活用】
高さ3・6メートル、質量1トンを超える産業用ロボットを使って、生産ラインの自動化はどこまで可能なのか―。安川電機ロボット事業部の岡久学技術部部長は、自動車メーカーが抱える生産ラインの省人化や省スペース化に向き合っていた。
エンジンやサスペンションなどの組み付けはロボットを使って自動化されているが、1トンを超す重量物が多く、ロボットもシステムも大型化している。今後、電気自動車(EV)が普及すれば、さらにモーターなどの大型部品も加わってくる。岡久部長は「床下からのアプローチを最大限に活用しよう」と独自技術の応用を進めた。
【電源容量85%減】
車両生産用途には6軸多関節機が一般的。だが六つの駆動軸を持つ多関節ロボットは大型で取り扱いが難しい。「MOTOMAN―MLT1700」は3軸構造を採用することで上下方向動作に特化した。可搬重量は1500キログラムながら高さ約0・6メートル、質量2200キログラムと大幅な小型化を実現した。液晶ガラス基板搬送装置の技術を取り込むことで3軸構造を可能にした。
上下駆動部の1軸目と2軸目を連動させ、上下方向のみ動作する。これにより駆動部に負荷されるトルクを軽減し、モーターと減速機(ギア)の小型化を実現した。最も苦労したのは減速機の選定だという。
具体的な小型化については従来の6軸機と比べて質量で75%、製品高さで80%削減した。また駆動部部品の小型化と駆動軸の削減により、電源容量を85%削減したことで電源設備の小型化にも成功した。製品高が0・6メートルと低いため車体下部に潜らせることが可能で、重量部品の下からの据え付け対応に道を開いた。
【部品として認識】
MLT1700は産業用ロボットだが、岡久部長は「ロボットではなく部品として認識している」という。車両生産現場では依然6軸の大型ロボットが主力で3軸機は6軸機を補完する1コンポーネントとして位置付ける。将来は「ロボット同士が会話することでモノづくり現場の品質向上につなげていく」狙いもある。安川電機が提案する生産性向上のためのソリューションコンセプト「アイキューブメカトロニクス」実現の先兵を担っている。(北九州支局長・大神浩二)
(2018/12/4 05:00)