[ オピニオン ]
(2019/3/22 05:00)
米中貿易協議が大詰めを迎えている。通商、知的所有権などの分野ではおおむね一致しているという。一方、協議の履行検証や追加関税の扱いについて両国の溝がある。ただ、両国だけでなく、世界経済への影響が大きいことから、近く何らかの合意に達するとの見方は多い。今後、米中関係は個別の企業や組織などを対象に制裁を与える新たな段階に入っていきそうだ。
米中の通商分野では、中国が米国製品を大幅に輸入拡大し、対米貿易黒字を是正していく方向で一致している。また、為替についても、人民元の安値誘導など為替操作を撤廃することなどで合意していると見られる。
さらに知的所有権分野は、中国は知的所有権の保護について、強化する方向で一致し、法的整備を進めていくという。技術移転も、行政による強制行為を停止することで合意している。
今後の焦点は、追加関税の扱いと協議の履行検証をどうするか。追加関税について、中国側は貿易不均衡是正や知的財産保護で合意すれば、双方が追加関税を全て撤廃すべきという立場。一方、米国は合意履行を確かめながら、追加関税を段階的に残したい思惑がある。
履行検証は、米側が貿易協議での合意事項について、合意を守らせる仕組みや、合意事項に反する場合の懲罰メカニズムなどを提案している。一方、中国は「履行検証の仕組みは、双方向、公平、平等でなければならない」として、反論する。
こうした両国の溝が、首脳会談開催を遅らせている。もっとも、厳しい国内事情にさらされている両国首脳にとって、一定成果がのどから手が出るほどほしいのは間違いない。合意まではそう遠くないと見られる。
課題は合意後。トランプ米大統領にとって、貿易戦争はほんの序章にすぎない。ここにきて、「対等」を基準として米中関係を全面的に見直すとともに、「貿易戦争の役割は終わった。今後は全領域を対象とするピンポイント・アタックになる」(日本総合研究所の呉軍華理事)とみる。米中関係から目を離すことはできない。
(2019/3/22 05:00)