[ オピニオン ]
(2019/7/23 05:00)
参議院選挙を乗り切った安倍晋三首相は、11月に首相としての在職日数で歴代最長に達する見込みだ。今後は長期政権にふさわしい成果を求めたい。
投票率が50%を割り込むなど盛り上がりを欠いた参院選だったが、与党はかろうじて国民の信任を得たと言える。自民党は議席を減らしたものの、与党としては勝敗ラインの改選過半数を大きく超えた。野党の一部は躍進したが、政権交代の訴求には力不足だった。
安倍政権を基本的に支持している産業界は、10月の消費税増税の実施はもちろん、成長戦略を着実に進めることを期待している。政権の公約のひとつである憲法改正については、産業界は明確な形での意見集約はしていない。ただ安倍政権がこれまでも性急な改憲発議に突き進まなかったことを評価する声は多く、今後も国民との対話が望まれよう。
首相の自民党総裁としての任期は残り2年余り。一部には総裁4期目を認めて任期を延長すべしとの議論もある。そうした延長が実現せずとも、安倍政権が日本の憲政史上、最も長期にわたり支持を集め、求心力を維持していることは間違いない。
2012年12月に第2次内閣として返り咲いてからの安倍政権は、確かに実績を重ねてきた。内政では景気を浮揚し、産業界の求める法人税率の引き下げを実現。外交では日米同盟を強固にする一方、環太平洋連携協定(TPP)など新たな時代への対応を進めた。
しかし、十分とは言いがたい面もある。経済対策の柱である日銀の“異次元緩和”に出口が見えないまま、デフレ脱却は後ズレしている。成長戦略も十分な成果がみえない。増大する防衛費は米国からの調達に傾斜している。最近では韓国向けの貿易規制が、自由貿易に対する日本の姿勢を疑われかねない危険をはらんでいる。
すべてに満足のいく結果を求めることは非現実的だが、大胆な規制改革など長期安定政権でこそ実現できる政策もある。安倍政権には、より長期的な視野での大きな成果を期待する。
(2019/7/23 05:00)