(2021/9/27 05:00)
中国経済の急速な減速が世界に及ぼす影響は甚大だ。不安が不安を増大させる市場心理を払拭(ふっしょく)するためにも、中国政府の慎重なかじ取りが求められる。
中国不動産大手、中国恒大集団の経営危機を発端に、中国経済の先行きを不安視する声が高まっている。恒大集団は、不動産事業から電気自動車など多角経営で急成長した企業の代表格だが、その実態は借金で事業を拡大するリスク過多の経営手法だった。2020年に中国政府が不動産価格の高騰対策として、不動産事業者向け融資の抑制に転じたことで資金繰りに窮し、経営危機が現実となった。
放漫経営が原因だけに、安易な救済策はとれない。中国政府は格差拡大の是正へ「共同富裕(共に豊かになる)」を唱えており、不動産価格の高騰対策は最大の課題となっている。一方で、不動産価格の急激な下落は国民財産の目減りに直結し、国民の不満が高まる恐れもある。
津上俊哉日本国際問題研究所客員研究員は「日本や世界経済にとって心配すべきは、中国の経済成長が下半期にかけて減速する懸念があることだ」と指摘する。
中国はいち早くコロナ禍から脱却したことで、輸出を拡大し経済を回復させてきた。ワクチン接種効果で先進国を中心に生産が回復し、中国の優位性が薄まりつつある。資源価格の高騰や半導体不足は中国にとっても大きな痛手である。それに加えて、融資規制によって不動産投資が減退すれば、経済成長下振れ要因がさらに加わる。
恒大集団の経営危機がただちに世界経済に影響を及ぼす可能性は低いとみられるが、中国政府が対応を誤れば、余波は世界に及ぶ。恒大集団の債務問題で世界の株式市場が乱高下する背景には、中国政府による経済政策への不安があるからに他ならない。
日本にとって中国は最大の貿易相手国である。好調だった日本から中国への工作機械受注額(確報値)が、8月に前月比21%減になるという気になるデータもある。変化の予兆を見逃してはならない。
(2021/9/27 05:00)