ロボットと働く/九州電力 自動走行でスマート保安

(2023/9/19 05:00)

災害想定、自治体と連携

九州電力は苓北発電所(熊本県苓北町)で、自動走行ロボットや飛行ロボット(ドローン)を用いたスマート保安の実証を進めている。高速大容量でのデータのやりとりを可能とする第5世代通信(5G)も活用し、火力発電所のデジタル変革(DX)を実現する。テクノロジーにより発電所の安全性を高めるだけでなく、自然災害も想定して自治体との連携体制を構築することで、地域への貢献も狙う。(西部・三苫能徳)

  • 災害時には自動走行ロボット㊨が発電所構内の車列を誘導する(苓北発電所での実証)

熊本県の西端部、天草諸島で最大となる天草下島にある九州電力の苓北発電所。1995年に1号機、2003年に2号機が運転を始めた石炭火力発電所だ。天草灘に面した石炭の荷揚げ岸壁を構内に擁し、石炭運搬船が年40隻ほど着岸する。

同発電所では22年から、DXの一環として自動走行ロボットやドローンを用いたスマート保安の実用化を進めている。「ローカル5G」のネットワークも構内の一部に構築し、保安機器を通じて撮影した高画質映像が遅延なく飛び交う。

自動走行ロボットは構内巡回や災害時の車両誘導を担う。3次元センサーでマップを作成し、設定ルートを自律走行する。赤外線センサーによる検温、アナログメーターの読み取りや識別による異常検知の機能も持つ。21年度に九州電力送配電の新壱岐発電所(長崎県壱岐市)で実証した知見を横展開する。

災害時は構内を走る物資搬送用車両などの誘導を想定する。天草下島は橋などを通じて九州本土とつながるが、陸路の遮断による孤立リスクも抱える。

  • 発電所の港湾部では自律飛行のドローンが巡視する

その際、構内の岸壁で緊急支援物資を受け入れる。船舶の着岸場所から正門までの約1・5キロメートルを先導する必要があり、誘導要員を確保できない場合もロボットに任せられる。ロボットは障害物や人間などを検知した場合は自動で停止する。

港湾部では障害物回避機能を搭載したドローンが保安に携わる。自動・自律、手動による飛行で石炭運搬船や貯炭場を巡視点検する。映像をリアルタイムに伝送し、保全業務に生かす。計器の読み取りも可能だ。併せて固定の高精細カメラも不審船監視などのために運用しており、ドローンはその死角も補う。

九州電が19年に始めたドローン撮影サービス事業のノウハウを反映させる。災害時には、映像を熊本県に伝送することも可能とし、遠隔地から物資の運搬状況を監視できる体制をつくった。

このほか発電所への入退管理では人工知能(AI)による画像認証を導入。車両ナンバーを自動で読み取るシステムを運用中だ。

22年度は総務省の委託事業を通じた実証として、NEC、正興電機製作所のほか、グループのニシム電子工業(福岡市博多区)、西日本プラント工業(同中央区)と連携した。国事業の終了後も実用化に向けた検証を走らせる。

九州電の担当者は「日常の運用に合う形に精査し、確実な実装をしていきたい」と効率的で安全な発電所の実現を目指す。

(2023/9/19 05:00)

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