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産業春秋/顔の見える製品作り

(2015/11/19 05:00)

マンション群ではなく、キューポラ(溶解炉)が街の象徴だった時代の埼玉県川口市。近所の鋳造会社から図面を受けた木型会社は夜でも納品する光景が普通だったという▼先日、川口のモノづくりを担う匠たちの講演会があった。木型業のイノウエの2代目社長、井上芳久さんは「技能を磨けば図面を読む力や想像力が身につき、お客さんに工程改善を提案できる」と力を込めた。仕上げは今も鑿(のみ)や鉋(かんな)による職人技。入社3年目の若手に技能検定2級の取得や、技能五輪への参加を促す▼鋳物会社の永瀬留十郎工場の技術顧問、永瀬勇さんは採用難を嘆く。この道45年、半導体製造装置向けなどの鋳物を手がけるが、将来の現場の中核となり得る人材が集まらない▼「鋳物の品質を決めるのはコンピューターではなく人間。日本人はカネもうけより、良い品物を作ることに向いている」と持論を説く。顧客からも一目置かれるこうした匠たちが、伝統的な産業集積の強さの源泉だ▼最近、建設業界を揺るがすマンション基礎の不正は、下請け業者と納期やコストについて十分な意思疎通ができていなかったことが背景のように思える。互いに顔を見つつ、信頼関係を積むことが品質向上の原点ではないか。

(2015/11/19 05:00)

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