[ その他 ]
(2015/12/21 05:00)
『どんな雑誌だって、企画にこまったらよく京都特集を、くむじゃあないか』。朝日新書の『京都ぎらい』(井上章一著)の一節だ。同じ苦情を京都企業の経営者から言われたことがある▼近年は名所や文化遺産の観光特集にとどまらず、成長著しい京都企業もメディアの格好の題材。ステレオタイプな取り上げられ方にウンザリ気味らしい。本紙も耳が痛い▼もっとも、この経営者は洛外にある自社を「京都企業とは違う」と話す。今は市内とはいえ、平安京の条坊から外れたら別。『嵯峨でそだち、今は宇治でくらしている』という『京都ぎらい』の著者同様、千年の都では「よそさん」扱いされるとか▼いかにも閉鎖的な社会に聞こえるが、実際の京都企業はもっと合理的。京セラ創業者の稲盛和夫さんが鹿児島出身であるように、名だたる京都企業のリーダーは必ずしも京都人ではない。大学の街でもあり、内外から人材が集まる▼そんな話題を振ったら、洛北の上賀茂の住人から「今の京都の中心は”新しい町“ですから」と念を押された。豪族の賀茂氏が大和国からこの地に入ったのは平安遷都より昔。千年なんて、まだ若いということらしい。そんな一様でないところも京都の強みか。
(2015/12/21 05:00)