産業春秋／観光客と安全

日本人お断り―。外国人しか入れない飲食店が一時、話題となった。もちろん排他的・差別的な意味ではなく来日外国人客を囲い込むため、特化したサービスを提供するのが目的だという▼いたる所で外国人が増えたことを実感する。先日、都内の繁華街で飲食店の女性店員が中国語で呼び込みをしている姿を見かけた。見渡すと近くに大型家電量販店がある。”爆買い“帰りの中国人客を狙っていたのだろう▼世界中で多くの人が海外旅行を手軽にできる時代になった。アジアの新興国では、富裕層ばかりでなく中間層でも海外旅行をできるだけの経済力を身につけている。訪日観光客は今年、すでに過去最高を更新した▼食事や文化、自然など日本にはたくさん良いところがある。それにも増して誇らしいのが日本の安全性だ。電車内で安心して居眠りできる国は、そうはないだろう。夜、酔っ払いのサラリーマンがこれだけ多い国もあるまい▼欧州のテロや米国の銃乱射事件で、無差別に人命が奪われた。日本も決して対岸の火事ではないが、少なくとも日常生活の安心感は先進国の中でも頭ひとつ抜けている。水と安全はタダではないというが、末永く外国人が安心して観光できる国でありたい。