[ オピニオン ]
(2016/9/23 05:00)
電車や街中で外国人をよく見かけるようになった。“爆買い”の中国人旅行者だけでなく、韓国や欧米者も少なくない。ただ直近の訪日外国人旅行者の伸びは鈍化している。政府は旅行者を都市部以外に誘致することで魅力を高めようとしているが、それが日本の自然の豊かさを傷つけるようではいけない。
訪日外国人旅行者は13年に1000万人を突破した。2015年は1973万7400人と、わずか2年で倍近くに増えた。15年の外国人旅行者による消費は3兆4771億円で、前年比71%増。政府は20年に2000万人の目標を掲げていたが、達成が確実になったために目標を4000万人に倍増、さらに30年に6000万人を目指している。日本での消費額は20年に8兆円、30年に15兆円に増やす目標という。
目標達成の施策の一つとして環境省は「国立公園満喫プロジェクト」に着手した。16年度補正予算で準備し、17年度に約100億円の予算を要求した。15年の訪日外国人の国立公園利用者430万人を20年までに1000万人にする計画だ。
すでに阿寒、十和田八幡平、日光、伊勢志摩、大山隠岐、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、慶良間諸島の8国立公園を選定し、公園ごとに地域協議会を設けて12月までに「ステップアッププログラム2020」を策定。来年1月以降、ビジターセンターや自然歩道の整備、屋外広告の制限、質の高いホテルの誘致などを検討しているようだ。
ただ国立公園は、単に景観の良さだけでなく希少な動植物が生息・繁殖しているところが少なくない。これまで環境省は、規制によってこれらを保護する役割を担ってきた。建物が建ち、訪問客が増えれば生物多様性に影響を与えることが懸念される。
外国人に東京・京都・大阪のゴールデンルートばかりでなく、自然公園を訪れてもらうのは良いことだ。環境省には目標にこだわりすぎず、生物多様性保全を前提にした施策を望みたい。それが国立公園を“満喫”することにつながると思う。
(2016/9/23 05:00)