[ オピニオン ]
(2016/11/2 05:00)
政府と日銀の悲願である物価上昇率2%は、一体いつ達成できるのだろう。日銀は1日に開いた金融政策決定会合でまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、目標達成時期を「2017年度後半」から「18年度ごろ」に先延ばしした。黒田東彦総裁の任期は18年4月のため、任期中の目標達成はきわめて難しくなった。
2%の物価上昇率は、わが国の成長力を強化してデフレから脱却するため、13年1月に政府と日銀が連携し、目標として設定した。日銀は同年4月に就任した黒田総裁のもと、2年後の目標達成を目指して、量的・質的金融緩和に踏み切った。
目標達成に向けて日銀は14年10月に追加緩和。16年2月にはマイナス金利を導入した。それでも物価は上がらず、目標時期の先延ばしを繰り返した。現状は8月の消費者物価指数がマイナス0・5%で、6カ月連続して前年を下回っている。
今年の夏ごろまで黒田総裁は「必要とあれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和を行う」「量的・質的緩和、マイナス金利の3方向とも拡大する余地はある」と述べ、追加緩和に積極的な姿勢をみせていた。だが今回、目標達成時期を先送りしたにもかかわらず追加緩和を見送った。
これは妥当な判断だろう。世界経済の下振れ懸念は後退しており、この先は物価上昇が見込めるとの判断が背景にある。原油価格が上昇傾向にあるうえ、米国は年内にも利上げに踏み切る可能性が大きく、円安もプラスに働くだろう。
これまで物価目標の達成時期が先送りされるたびに、市場では追加緩和の期待が膨らみ、相場が乱高下した。ただ日銀は9月に、物価上昇率が安定的に2%を超えるまで追加緩和を継続する新たな枠組みを採用。これで市場には「日銀は長期戦に転じた。物価目標と追加緩和は直接リンクしない」という見方が生まれ、動揺しなくなった。
市場を過度に意識した金融政策は本来の姿ではない。日銀はサプライズに頼らず、経済の実態を見つつ日本のデフレ脱却に取り組んでもらいたい。
(2016/11/2 05:00)
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