[ オピニオン ]
(2016/12/8 05:00)
環太平洋連携協定(TPP)関連法が週内に成立する。米国の動向により発効の見通しが立たないのが残念だが、この協定を今後の日本の経済外交の基準にしなければならない。
内閣が提出した法案は11月10日に衆議院が可決した。条約の承認に関しては、参議院の審議経過にかかわらず憲法の規定に基づいて30日後に自動的に国会の議決となる。すでに終盤国会の関心はカジノ法案などに移っている。
一方、米国では来年1月に新政権を発足するドナルド・トランプ次期大統領が「TPPからの離脱」を公言している。このままでは発効は不可能だ。
だからといってTPPの交渉の価値は失われない。TPPは自由貿易協定(FTA)を超え、サービスや情報、労働の域内移動の基準を高い水準で定めた。米国を盟主とする「共通の価値の同盟」というべきものだ。日本はここで名誉ある次席の地位を占める。
米国は、あるいは工業製品の一部では海外製品に押されるかもしれない。しかし情報やサービスの市場を獲得する可能性が生じる。しかも価値観を異にする新興国の進出を広範囲に防げる。いずれは、そうしたルールに新興国を従わせ、世界の経済秩序の主導権をTPP側が握る思惑もあったはずだ。
こうした進んだ内容を先進国である日米だけでなく、アジア太平洋の新興国や発展途上国で共有できたことにTPPの意義がある。米次期政権が自国の主権にこだわるあまり、長期戦略を失うことに疑問を感じるむきは産業界にも多い。
わが国の立場では、米国抜きのTPPはあり得ない。米次期政権の翻意を促しつつ、二国間協議などの展開によって通商戦略を立て直すことになろう。その場合でも基準となるのは高い水準で自由化に合意したTPPであり、わが国が国会承認を終えておくことに意味がある。
幸い日米関係はきわめて好調であり、米次期政権の発足後に再交渉を模索することも可能だろう。日本が国内手続きや準備を怠るようではいけない。
(2016/12/8 05:00)