[ オピニオン ]
(2016/12/15 05:00)
日露首脳会談がきょう行われる。懸案の領土問題の進展が期待されるが、それを別にしても日本に利益のある経済協力にはしっかり取り組むべきだ。
安倍晋三首相は、ロシア大統領として11年ぶりに来日するプーチン氏を地元・山口県に招き、胸襟を開いて関係改善の道を探ろうとしている。だが問題の解決は容易ではない。
日露間の戦後処理はいまだに完了しておらず、平和条約も結んでいない。エリツィン元大統領時代に北方4島の帰属を含む早期条約締結を目指す「東京宣言」を発表したが、その後も目立った進展はない。
今回の安倍・プーチン会談でも、ロシア側は北方4島の帰属に触れないまま経済協力を期待しているとされる。日本側が協力に応じなければ領土問題が俎上(そじょう)にすらのらないようでは正常な交渉とはいえない。
一方、日本側が安易に協力を表明すれば、ロシア極東開発のための巨額の政府開発援助につながりかねない。首相にとっても難しい判断となる。
ロシア経済分野協力担当相を兼ねる世耕弘成経済産業相は、日本記者クラブでの会見で日露協力について「ロシア側はカネが欲しいのではなく、優れたパートナーを求めている」と話している。また日露首脳同士は「過去の何度もの会談を通じて信頼関係を深めてきた」という。こうした基盤がなければ、領土問題のような難しい交渉はできないという意味だろう。
産業界はどう対処すべきか。ロシアには広大な用地や豊富な天然資源、欧米に比べて安価な労働力がある。自動車や電機、ロボット、医薬・食品など日本が得意とする産業が受け入れられる土壌もある。問題は市場や政治の透明性であり、日本企業が進出した後も安心して操業できるインフラを構築できるかどうかが問われる。
安倍・プーチン会談の結果は分からない。ただ双方の利益が合致するのであれば、広大な市場が日本経済に門戸を開く可能性が生じる。健康・医療産業や中小企業育成など、可能な分野の協力は前向きに考えるべきだ。
(2016/12/15 05:00)