[ オピニオン ]

社説/山梨の蓄エネ技術実験場−地元経済波及を狙う新アイデア

(2017/1/18 05:00)

山梨県は、再生可能エネルギーで作った電力をためる「蓄エネ」技術の実験の場を企業に提供している。地元経済への波及を狙った産官連携の新しいモデルになりそうだ。

甲府市内にある標高380メートルの米倉(こめくら)山が実証拠点だ。大規模太陽光発電所(メガソーラー)と再生エネで自給自足する施設があり、複数の企業が開発中の蓄エネ技術を持ち込み、四季を通じて評価している。

昨年11月には東京大学発ベンチャーのエクセルギー・パワー・システムズ(東京都文京区)が開発した改良型ニッケル水素電池の実験を始めた。メガソーラーの発電量が激しく増減しても、充電と放電の素早い切り替えで電力の品質を整える。急速充放電を続けられる耐久性を実証するのが狙いだ。

メガソーラーの電力で円盤を回すフライホイール蓄電装置も稼働している。発電量が落ちると回転エネルギーを電力に戻して送電を調整する。鉄道総合技術研究所がリニアモーターカーの超電導磁気軸受を応用して開発中だ。

隣接する県の施設は屋根の上の太陽電池などで電力を自給自足するとともに、余剰電力で水素を作って貯蔵し、必要な時に燃料電池に送って発電する仕組みを導入している。ここではパナソニックが、水素を直接利用する新型燃料電池3台の評価試験を始めた。

再生エネの導入量の増加に伴って、その不安定さを補うための蓄エネ技術の確立が急がれている。試験にはメガソーラーが必要であり、米倉山は関連メーカーにとって貴重な存在だ。実際の運転データを示せるので、開発した製品の営業でも説得力が生まれる。

日照時間が長く、太陽光発電の普及した山梨県は蓄エネ製品の市場としても期待される。客先への設置に地元企業が参加できれば経済効果が見込める。

県は蓄エネ技術と再生エネの組み合わせで、住民や企業に安価な電力の供給を目指すという。実験場所を企業に提供する山梨モデルに、地域産業の活性化策を学びたい。

(2017/1/18 05:00)

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