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【電子版】デジタル編集部から(30)次のモービルアイを探せ−注目されるイスラエルの自動運転関連企業

(2017/1/23 05:00)

  • 指によるジェスチャーで画面操作が行えるアイサイトのデモ。画像から性別や年齢も推定できる

自動運転関連でイスラエルのスタートアップが注目されています。その中でも、最もホットな企業の一つがモービルアイでしょう。画像処理や機械学習で高度な技術を持ち、先進運転支援システム(ADAS)関連で多数の車メーカーと提携。うちBMW、インテルとは3社共同で完全自動運転車の開発に乗り出しています。

一方で、ドライバー同士で渋滞情報をはじめとするリアルタイムの交通情報をスマートフォンで共有できるアプリを提供しているのがウェイズ。グーグルが2013年に10億ドル以上で買収したことでも大きな話題になりました。

そうした折も折、1月18−20日まで東京ビッグサイトで自動車関連の先端技術展「オートモーティブワールド」が開かれました。そこにイスラエル企業が10社ほど参加していましたので、次のモービルアイやウェイズのような企業が出ていないかどうか、見に行ってきました。

「今日はブースに来場者がかなり来ているし、顧客になってくれる企業が見つかるかもしれない」。こう上機嫌に話すのは、アイサイトのロニー・グリーンバーグ副社長。同社は画像認識技術が強み。車載カメラを通じて運転者の頭や上体の姿勢、まぶたの様子、視線の方向などを常時監視し、居眠りの警告を出したり、運転者個人や乗員数とその位置を認識して座席・ミラー・エアコンなどを自動設定したりできる。それに加えて、手や指のジェスチャーを画像で認識し、画面を見ないでインフォテインメントシステムの操作ができる技術も持っています。

ジャンゴ・コネクティビティーもカメラと画像処理による運転者監視のスタートアップ。頭の傾きや視線のほか、口や手の動きも高い精度で検知できます。「車向けのコンピュータービジョンが有望なことから、インフォテインメントシステムの事業をやめて事業転換した」とユバル・ベンジーブ副社長。新分野の製品は4カ月前に出したばかりですが、フランスに1社顧客を持つという。

あらかじめ学習させた物体を、走行中の車載カメラが捉えた車外の映像からリアルタイムに検知し、その位置をサーバーに上げて地図情報として共有する仕組みを開発したのがイオン・テラ。すでにドイツテレコムのスマートフォン向けには、道路脇の駐車スペース探索ソリューションを提供しています。走行中の車や道路の路面状況、交通信号、屋外広告、歩行者など、事前に物体を登録すれば、さまざまな対象物が検知できるという。

セキュリティー関連では、コネクテッドカーや自動運転車へのサイバー攻撃を防御するカランバ・セキュリティーの「カーウォール」がユニークでした。あらかじめ製造過程で電子制御ユニット(ECU)そのものにセキュリティー設定を施し、ハッカーがセキュリティーホールを利用してマルウエア(悪意のあるソフト)を仕掛けようとしても、初期設定以外のソフトの部分書き換えは一切受け付けないという、いわば逆転の発想。ユーザー側ではセキュリティーのノウハウが必要なく、OSやハードウエアにも依存しないといいます。

IQPは、アプリケーションを迅速に開発するためのアジャイル開発手法を提案。プログラム言語を使わずに、パーツや機器などの画像をドラッグ&ドロップしてプログラムを素早く組める。それまで6カ月かかっていた開発作業が2週間で完了した顧客の事例もあるといいます。当初はIoT(モノのインターネット)向けを想定していましたが、昨年から自動車向けにも展開し始め、トヨタ自動車に採用されたとのことです。

そのほか、センサー関係で、軍事用のレーダー技術を自動車に応用したのがアーブ・ロボティクス。小型・軽量・省電力・低コストのレーダーを使い、完全自動運転にも対応するというリアルタイム3Dマッピング技術を開発。光レーザーをスキャンしながらマッピングを行うライダー(光検出・測距)と異なり、全天候型なのが特徴。300メートル先まで測定でき、解像度は10センチメートルという。

さらに、バイヤーは7ギガ〜10ギガヘルツ帯のウルトラワイドバンドの電波を照射し、その反射波を独自のアルゴリズムで解析、壁の向こう側にいる人の状態などが捕捉できる技術が売り物。日本では技術基準適合証明(技適)がまだ取れていませんが、車向けでは座席に座っているのが大人か子供かを検知したり、車外の障害物検知などに役立てられるとしています。

このように、自動車関連でもさまざまなハイテクスタートアップを抱えるイスラエル。「完成車メーカーは存在しないが、日本やフランス、ドイツなどから車関連の視察が相次いでいる」。イスラエル輸出協会自動車部長のサギーブ・エラドさんは自慢げに言います。実際、イスラエルと日本企業のビジネスを支援するイスラテック(東京都港区)の加藤清司社長によれば、「欧米の自動車メーカーもイスラエルで現地拠点の整備を急いでいる」ということです。

その加藤さんがこのほど上梓した『スタートアップ大国イスラエルの秘密』(洋泉社)という本では、ナイトビジョン機器を開発するブライトウェイ・ビジョンや、ライダー関連のイノビズ・テクノロジーズ、人工知能による運転支援システムのネクサーといった自動運転関連の有望スタートアップの名前が紹介されています。

さらに、本の中で加藤さんは、「イスラエルは自動運転関連技術に必要とされる画像認識、アルゴリズム、セキュリティー、通信などで得意とする領域を多く持つ。そのため、今後もこの領域では、イスラエルから多数のスタートアップが出てくるだろう」と指摘しています。(デジタル編集部長・藤元正)

(2017/1/23 05:00)

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