[ オピニオン ]

社説/アスクル倉庫火災の教訓−消火を阻む新鋭設備、効率化に死角

(2017/2/28 05:00)

現代の倉庫は単なる商品置き場ではなく、自動化機器を備えた“装置産業”の様相を呈している。法令に準拠するだけではリスクへの備えは不十分だ。

アスクルの物流倉庫「ASKUL Logi PARK首都圏」(埼玉県三芳町)の火災は16日朝の発生から火勢が弱まる「鎮圧」まで6日間を要し、その後数日間、残り火の消火活動が続いた。最新鋭の物流拠点で床面積の約3分の2、東京ドーム1個分に当たる4万5000平方メートルが焼損した事実は、産業界にとって衝撃だ。

倉庫は地上3階建て延べ床面積約7万2000平方メートルで、2013年7月に稼働した。文具や日用品など約7万品目を扱い、スプレー類など引火・爆発の懸念のある商品も含まれる。鉄筋コンクリートと鉄骨を組み合わせ、柱が少ない広大な保管・荷役スペースを確保。そこに総延長8・5キロメートルに及ぶコンベヤーを張り巡らし、ピッキングロボットが配送する商品を画像認識して箱詰めする。

火災は1階の廃棄段ボール置き場付近で発生した。建物内には建築基準法に基づき、スプリンクラーや防火シャッターなどの防火設備があった。だが初期消火に失敗して火の手が回り始めると、外壁に窓がほとんどなかったため消防の放水でも延焼を防げなかった。

4日目にようやく消防隊員が建物に入ったものの、焼け崩れた保管ラックや仕分け装置、コンベヤーなどに行く手を阻まれて消火活動に手間取った。

最新鋭の物流施設では、自動搬送・保管ラックで天井近くまで商品が積み上げられている。ひとたび火災が発生すると急速に燃え広がって煙も充満し、通常のスプリンクラーや備え付けの消火器で対処しきれないことは想像に難くない。

倉庫が大規模化すると、それだけリスクも大きくなってしまう。場合によっては周辺住民に被害が及ぶ。物流の集約や効率化の死角といえる。

建築基準法は建物を安全に利用するための最低基準にすぎない。取扱品の特性も考慮したリスク管理を教訓にしたい。

(2017/2/28 05:00)

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