[ オピニオン ]
(2017/3/20 05:00)
化石燃料からの投資撤退(ダイベストメント)運動が海外で広がっている。日本も、この潮流を見過ごしてはならない。
ダイベストメント運動は米国の大学で始まり、欧米の保険会社やロックフェラー財団などの支持を得た。環境保護団体「350.org」は、機関投資家に撤退を呼びかけている。来日したメイ・ブーヴィ事務局長は「特に注目しているのは採掘と燃焼の両方で二酸化炭素(CO2)を大量発生する石炭。これ以上、石炭火力発電所を新増設してはならない。日本の銀行は化石燃料から再生可能エネルギーへの投資に資金の流れを変えていただきたい」と語る。
日本では石炭火力の建設が各地で計画されている。原子力発電所の再稼働の遅れを補うとともに、電力自由化で新たな電源を獲得する必要があるからだ。
環境省によると、昨年11月時点で石炭火力の新増設計画は約2050万キロワット。すべて建設されると、2030年の設備容量は老朽石炭火力を廃止しても6160万キロワットになる。
この時の石炭火力によるCO2排出量は約3億トンで、目標を約7500万トン超過する。30年度の温室効果ガス削減目標を13年度比26%減とする「日本の約束草案」に暗雲が立ち込める。
さらに問題なのは、環境アセスメント対象の11万2500キロワット以上をわずかに下回る小規模石炭火力が多いことである。環境省は「実務集」を作成し、こうした石炭火力の事業者が自主的に影響評価をするよう求めているが、実効性は疑問だ。
民間企業の合法的な事業を止めることはできないので、規制の網を広げて今後に備える必要がある。また石炭火力の事業者は、できる限り植物由来燃料の混焼比率を高めることなどで、CO2の排出を減らす方策を講じるべきであろう。
「気温上昇を産業革命から2度未満、できれば1・5度に抑え、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」というパリ協定の合意を達成するためには、日本も相応の努力が必要だ。投資家にも、そうした視線を望みたい。
(2017/3/20 05:00)
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