[ オピニオン ]
(2017/7/5 05:00)
純国産のエネルギー資源と期待されるメタンハイドレート開発が分水嶺(れい)を迎えている。経済産業省・資源エネルギー庁が実施した海洋産出試験では、思うように回収量が増えず、安定した生産技術の確立に課題を残した。原因究明と国際連携を進めて、商業化を目指したい。
メタンハイドレートはメタンガスと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質で「燃える氷」と称される。日本近海に相当量の存在が見込まれ、鉱物資源やエネルギーの大半を輸入に頼る日本にとって期待は大きい。
政府は2030年代の商業化を想定し、累計1100億円規模の予算措置を施してきた。地球深部探査船「ちきゅう」を用いた産出試験には、1日7000万―8000万円もの莫大(ばくだい)なコストがかかるという。
6月末に終了した海洋産出試験は、渥美半島(愛知県)から志摩半島(三重県)の沖合で実施。3―4週間のガス連続生産という当初目標は達成したものの、生産量は増えなかった。
有識者を交えて課題を徹底的に洗い出し、結果を公表した上で、次につなげてもらいたい。試験方法の抜本的見直しが必要ならば、批判を恐れず、変更すべきである。
原油安や米国のシェールガス開発の進展で、足元ではメタンハイドレート由来の液化天然ガス(LNG)が競争力を持つかは不透明だ。しかし、わが国のエネルギー安全保障や新産業創出の観点から、商業化を進めていくことには意味がある。
民間企業の投資を呼び込み、商業化するには、一つの坑井で5―10年程度の連続生産が必要とされる。試験掘削の段階で、少なくとも数カ月―1年の長期安定生産の道筋を立てなければならない。
エネ庁は今後、国際連携にかじを切る。比較的コストが安いとされる陸上産出試験を米アラスカ州で計画するほか、インドと海洋試験の共同実施を検討する。中国が40日間を超える連続生産試験に成功したとの報道が伝えられるなど開発競争は激化している。柔軟な姿勢で日本の競争優位を保ちたい。
(2017/7/5 05:00)