[ オピニオン ]
(2017/7/28 05:00)
高度経済成長期に整備された大量の社会インフラの維持・管理が問題となっている。産学官が知恵を結集し、さまざまな技術やサービスの開発と普及を進めてもらいたい。
首都高速道路、名古屋大学、東京都下水道局など28件が初の「インフラメンテナンス大賞」を受賞した。社会インフラの維持・管理で優れた技術開発や取り組みを国が顕彰するもの。維持・管理を手がける担当者が、社会に広く知られる機会は多くない。地道な努力を重ねてきた受賞者の栄誉をたたえたい。
高速道路や鉄道、橋などは、これまで地域活性化や経済効果ばかりが注目されてきた。しかし今後は老朽化が加速する。新設から維持・管理に重点を移すためにも、メンテナンスに注目することは大事だ。
適切な維持・管理を怠れば重大事故を招きかねない。その典型が2012年12月に発生した中央自動車道・笹子トンネルの天井板落下事故だ。事故が起きて気付くのではなく、事故を未然に防ぐ取り組みが必要だ。
維持・管理の最前線では、従来の手法に加えて新しい知見やノウハウが求められている。特にビッグデータをはじめ、情報通信技術(ICT)の活用が有効だ。インフラの状況を常時把握できるリアルタイム・モニタリングや、効率的で高精度の点検・診断、効果的な管理システムの構築などが可能になる。インフラメンテナンス大賞でも、ICTなどを利用した技術やサービスが受賞した。
表彰制度に先立ち、16年11月には産学官が連携した「インフラメンテナンス国民会議」が発足し、国民運動に取り組んでいる。同会議には7月上旬までに617社・人が参加した。効率的で効果の高い維持・管理を実現するには、多くの関係者の協力が欠かせない。
同会議は、新技術の実用化に向けたマッチング活動や、自治体が抱える課題に企業がアイデアやノウハウを示す機会を設けている。こうした取り組みを通じ、少しでも優れた技術やシステム、サービスが現場で活用されることを期待する。
(2017/7/28 05:00)