[ オピニオン ]
(2017/8/3 05:00)
ITと金融を融合したフィンテックの新潮流が欧米からアジアへ広がり、ここ1、2年で投資額が2兆円規模に拡大した。日本もこの勢いに乗り遅れずに、フィンテックの国際センターの一角を担えるように総力を結集すべきだ。
フィンテックはスマートフォンや人工知能(AI)、ビッグデータなど最新技術を駆使した金融サービス。決済から資産運用、保険・証券取引などに領域を拡大し、金融業界にデジタル革新をもたらしている。コンサルティング会社のアクセンチュアの調査によると、市場動向はフィンテックへの過剰な期待感が一服する一方で、全世界で取引件数は着実に伸びている。
アジアでの投資額は、自国内に巨大な需要を持つ中国の存在感が圧倒的に大きく、インドも伸びている。日本も2016年は前年の2倍以上拡大した。
ただ出遅れ感は否めず、国内総生産(GDP)に占める割合は香港やシンガポールに比べて1ケタ低い。逆にいえば伸びしろは大きいともいえる。
香港やシンガポールは金融機関、ベンチャー企業(VB)、異業種企業、投資家、自治体など、さまざまなプレーヤーが参加する“ハブ(集約)型”が特徴だという。各プレーヤーが市場で出会い連携することで、新たなイノベーションが生まれる。アクセンチュアは「日本が目指すべきはハブ型だ」と指摘する。
香港やシンガポールは官が主導して地域フィンテックを振興し、成果を積み上げているという。日本では東京都がアジアの金融ハブを目指す国際金融都市構想の中で、フィンテックが持つパワーを取り込もうと議論を進めている。
海外では、銀行口座なども持てない金融弱者を対象に、少額取引などでフィンテックが広まった。この流れには日本勢は追従できなかった。
国際的なフィンテックハブを目指す中で、少子高齢化といった日本固有の社会課題から新たなイノベーションを掘り起こすことは可能だ。ここで乗り遅れるわけにはいかない。
(2017/8/3 05:00)