[ オピニオン ]
(2017/8/23 05:00)
地方の中堅・中小企業の人手不足が深刻さを増している。ただ仕事にやりがいを求める若者は少なくない。大企業とは異なる仕事への責任の大きさを訴えるとともに、経営者自らの志や夢を語ってほしい。
各地域の最低賃金審議会が最低賃金の引き上げを答申した。全国加重平均額は時給848円で、過去最大の上げ幅となる25円増。国は労働者の賃金格差是正を目指しており、9月末にも適用される見通しだ。
ただ地方や中小企業からは、賃金を上げても雇用がままならないと嘆く声が相次ぐ。国は企業に賃金上昇を求めるだけでなく、人手不足対策にも今以上に取り組む必要がある。
「県内就職率は20%程度。理由の一つが男女ともに働く場所が少ないからだ」。西日本の国立大学の学長はこう話す。在校生の30―40%は県内就職を希望するが、ほとんどが大手志向のため、最終的には大都市圏に流出する。賃金より都市生活や企業規模、働きがいを現代の若者は求める結果だ。
ある若手経営者は採用面接の際に「聞こえがいい言葉を並べない」という。無理をして採用しても、数年で退社されては時間やコストが水の泡と化す。
別の経営者は「甘言は働きがいを求める人材の心に響かない」と語る。「若い人は多少の賃金上昇よりも、働きがいや充実した職場環境を優先する」として、IoT(モノのインターネット)導入など、社内インフラ構築に投資している。
少子高齢化で人口減少が進む中、人材難は悪化の一途をたどるだろう。打開のための特効薬はなく、経営者の熱意でしか道は開けない。賃金引き上げと同時に、社員がその企業や経営者を誇りに思えるような経営が重要になる。
経営の神様といわれた松下幸之助は、仕事への誇りや、やりがい、志、熱意をたびたび口にしたと言われる。これらの言葉は時代が大きく変わっても、人を動かすエンジンである点に変わりはない。多難な時代だからこそ、経営者は夢や誇りを胸に乗り越えてほしい。
(2017/8/23 05:00)
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