[ 金融・商況 ]

【電子版】丸山隆平の「フィンテック最前線」(3)/カギはキャッシュレス化

(2018/6/24 07:00)

■経産省「キャッシュレス・ビジョン」に基づいた「キャッシュレス推進協議会」がスタート

 世界各国のキャッシュレス比率は韓国が89%に達するなど、キャッシュレス化が進展している国では軒並み40~60%に達しているが、日本は18%にとどまっている―。

 キャッシュレス化は店舗にとっては省力化効果が大きく、データの利活用も期待されているが、日本では店舗や消費者にいまひとつ人気がない。

 これらの情勢を分析した「キャッシュレス・ビジョン」に基づいた「キャッシュレス推進協議会」がスタートする。

■キャッシュレス決済比率を4割を目標に

 経済産業省はクレジットカード業界を管轄していることから今年4月「キャッシュレス・ビジョン」をまとめ公表している。2017年5月の「フィンテックビジョン」では「決済記録の電子化のカギはキャッシュレス化の推進」であることを指摘。同6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」では2027年までの10年間でキャッスレス決済比率を4割とすることをKPI(Key Performance Indicator:重要な評価指標)とした。

  • 6月14日に都内で開かれたFintech協会の勉強会で「キャッシュレスビジョン」について説明する経産省の海老原要氏

 15年における各国のキャッシュレス決済比率は図の通りで、日本は18・4%と低い。キャッシュレス化の利点は「消費者は大金を持たずに手ぶらで買い物ができる。店舗側はお金の管理が省力化できること。現状は閉店後のレジ閉めが大変な作業。コンビニでは開店前にお釣りを用意し、店を閉めてからお金を銀行に運ぶ必要がある。キャッスレス化は人手不足の解消につながる」(経産省商務・サービスグループ 消費・流通政策課市場監視官の海老原要氏)。

 同氏によると、16年の訪日外国人観光客に対する調査では「クレジットカードとキャッシュレス環境が整っていたらもっとお金を使ったか?と質問したところ、8割以上が『はい』と回答している」。

  • 経産省が2017年8月にまとめた報告資料「キャッシュレスの現状と推進」の2ページ目から抜粋

■各国のキャッシュレス事情

 スウェーデンでは個人間送金のスマートフォンアプリ「Swish(スイッシュ)」が普及。17年10月末で利用者は総人口の約60%に達している。国土が広い割に人口が少なく、都市も点在しており、冬季に現金輸送コストがかかることが影響している。韓国では97年の通貨危機以降、脱税防止や消費活性化を目的に政府主導でクレジットカードの利用促進が図られた結果、高いキャッシュレス比が達成された。

中国ではもともとは決済オンラインネットワーク・銀聯が普及していたが、アリペイ、ウイチャットペイなど2次元コードを使った決済がユーザーを獲得している。アリペイのビジネスモデルは1%以下の定額の決済手数料と簡易な仕組みで多くの加盟店を獲得している。また、アリババグループ内で消費者の買い物情報を共有し、利活用している。キャッシュレス化の大きな効果はデータ共有化による利活用。

 一例を挙げると、アリペイの加盟飲食店のその日の売り上げ情報、仕入れなどすべての情報の入手が可能なので、1万~2万円程度の少額融資は簡単に実行できる。

■キャッシュレス化が進まない日本の背景

 一方、日本でキャッシュレス化が進まない背景として、治安が良いこと、ニセ札が少ない、お札の紙質がよいことなどに加え、クレジットカードの加盟店手数料が高い、端末のコストが生じることなどがある。

 クレジットカード非加盟店への調査では、導入費用が高い、導入のメリットが感じられないなどが理由の上位を占めている。また、消費者への調査では使い過ぎが心配、セキュリティー面の不安、個人情報が収集され勝手に権利を侵害されるのでは、などの不安も指摘されている。

 日本ではキャッシュレスより現金支払いが普及しているが、そのための高度な販売時点情報管理(POS)や現金自動預払機(ATM)などのインフラ維持に年間1兆円を超える直接コストが発生しているという調査(野村総合研究所)もある。

■キャッシュレス推進協議会設立準備会がスタート

 こうした日本のキャッシュレス化を検討・推進するため今夏をめどに業界横断の「社団法人・キャッシュレス推進協議会」が設立される予定で、設立準備事務局がスタートした。

 推進協議会では①支払手数料のあり方②2次元コードの普及と標準化③データ利活用のためのビジネスモデルの構築④消費者・事業者向けキャッシュレスの啓発⑤関連統計の整備―などを進める。

 「キャッシュレス・ビジョン」では2025年の大阪・関西万博に向けてキャッシュレス比率40%の目標を前倒しし、より高い決済比率の実現を目指している。(隔週日曜日に掲載)

著者プロフィール

丸山隆平(まるやま・りゅうへい)

1972~1989年 日刊工業新聞記者としてICT産業、流通業界など取材。1990~2012年、IRコンサルタントとして100社以上の財務広報をサポート。2013年~フリーの経済ジャーナリストとして、経済誌、Webメディアで活動。現在、金融タイムス記者、プレジデントオンライン、ZUUonlineなどに寄稿。著書に『AI産業最前線』(共著、ダイヤモンド社)、『まるわかりフィンテックの教科書』(プレジデント社)などがある。1948年、長野県生まれ。

(2018/6/24 07:00)

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