[ トピックス ]
(2019/8/15 05:00)
相聞歌の薬草―時代超え化粧品に
新元号、令和の典拠である万葉集。その中で相聞歌といわれる、恋を詠んだ歌の題材に使われた植物「紫草(むらさき)」の根(紫根)は、飛鳥時代以前から染料として高貴な紫色を生み、薬としても重宝された。地域おこしの企業、みんなの奥永源寺(滋賀県東近江市、前川真司社長、0748・56・1194)は、絶滅危惧種の国産紫草を復活させ、自然派基礎化粧品「ムラサキノ」として18年に商品化した。
高齢化と過疎化が進んだ同地域で、前川氏が勤務していた滋賀県立八日市南高校などと連携し、栽培に成功。ムラサキノの販売は1万本を超えた。相聞歌のモチーフが時代を超え、化粧品を美しい薄紫色に染める。
紫草に関連する歌2首
あかねさす 紫野行き 標野(しめの)行き 野守(のもり)は見ずや 君が袖振る(万葉集巻一、20、額田王)
【意味】赤々と日の照らす紫草の野を行き、その標縄をめぐらした野を行きながら、あなたが衣の袖を振るのを、野の番人が見はしないでしょうか。
紫草の にほへる妹(いも)を にくくあらば 人嬬(ひとづま)故に 吾恋ひめやも(万葉集巻一、21、大海人皇子)
【意味】紫草のように気高く美しいあなたが好きでなかったら、人妻なのだから私がどうしてあなたを恋い慕うだろうか。
(滋賀県大津市皇子が丘に建つ歌碑と歌碑の説明書きより引用。)
(文・写真=成田麻珠)
(2019/8/15 05:00)