リスク管理の専門家に聞く、新型コロナウイルスへの企業対応

(2020/3/23 05:00)

  • MS&ADインターリスク総研 リスクマネジメント第四部事業継続マネジメント第一グループ長 上席コンサルタント 坂井田輝氏

感染拡大防止へ対策総動員

新型コロナウイルス(COVID―19)の感染が瞬く間に全世界へと広がり、世界保健機関(WHO)は3月11日、パンデミック(世界的大流行)と認定しました。日本防災産業会議では人命や健康、経済に多大なダメージを及ぼす感染症も重大災害と認識しています。そこでMS&ADインターリスク総研で上席コンサルタントを務め、リスクマネジメントやBCP(事業継続計画)対策が専門の坂井田輝氏(リスクマネジメント第四部事業継続マネジメント第一グループ長)に、企業がとるべき対応策などについて聞いてみました。(記事は3月17日現在の状況に基づいています)

社員に予防策徹底

―新型コロナウイルスについて、企業にも感染予防策が求められています。

「セミナーや会合・イベントの中止・延期、海外渡航の自粛に踏み切っている企業が多い一方、個人レベルでも、丁寧な手洗い、マスク着用、消毒用アルコールの使用、せき・くしゃみエチケット、換気の悪く人が密集した場所を避ける、時差出勤、在宅勤務(テレワーク)といった対策が推奨されている。会社としてはこうした予防策を個人任せにせず、社員に徹底していくことが重要になる」

―流通や小売り、交通・観光など、対面を基本とする業種・職種で留意する点は。

「対面ではなく、テレワークやリモートワークが可能な企業は実施すべきだが、対面での接客や出社が必要な企業は、仕事の実情に合わせてマスクの着用から、シフト勤務で人数を少なくしたり、オフィスでの社員同士の座席を離したり、座る位置を互い違いにしたり、ミーティングも広いところで離れて行ったり、できることをすべてやるしかない」

来訪者に問診票も

―企業の中には受付で訪問者の体温をチェックするところもあります。

「入館時の検温を強制するのは日本の企業でなかなか難しい場合もあるかと思う。例えば当社では社員に自主検温をさせている。毎朝必ず出社前に自宅で検温を行い、37・5度を超えていたら出社を控える措置をとっている。さらに来訪者に問診票に記入してもらったりする企業もある。発熱や、感染が広がっている国への最近の渡航歴を問診票でチェックするといった対応だ」

―社員で感染が疑われる人が出た場合、どう対応すればいいでしょう。

「自宅で待機し、外出を控えてもらうことが大切だ。現状は37・5度C以上の発熱が4日間(高齢者や基礎疾患を持っている人は2日間)続いた場合に相談センターを通して受診するのが政府の方針。実際にはその発熱が新型コロナウイルスによるものなのか調べないとわからないが、現状では最大限、安全やリスクを重視する立場から、感染が疑われる人は会社に出てこないのが基本となる。職場や通勤での感染拡大を一番避けなければいけない」

―感染防止策としてテレワーク、リモートワークを実施する企業が増えています。情報漏洩(ろうえい)やサイバー攻撃に注意するのはもちろんとして、テレワークでの留意点は。

  • NTTコミュニケーションズは全従業員を対象にテレワークを実施中。通信サービスの監視・保守など一部出社が必要な業務ではシフトを組み、時差出勤を推奨している(同社提供)

「もちろんセキュリティーがしっかりしているのが大前提。ウェブ会議システムによっては無料で使えるものもあるが、機密性を求めるのであればセキュリティーレベルの高いインフラを利用するべきだ。それが担保できないのなら、ウェブ会議での資料の共有は避け、セキュリティーが担保されたメールベースでの資料共有や、ウェブ会議は会話だけにするといったやり方もある。ウェブ会議システムは普段使い慣れていないと、つなげにくかったりする。事前に接続の仕方や接続環境をしっかり確認しておく必要がある」

―テレワークが難しい営業・サービス・製造などについては。

「今の局面はとにかく爆発的な感染拡大を防ぐのが国の大方針なので、なるべく出社しないで対処する方向をとるべきだと思う。一方で企業は社会にサービスや製品を提供する義務もある。ずっと事業を止めているわけにもいかない。BCPの考え方に基づき、自社にとって中断してはいけない業務は何なのか、どの部分が停止できるのか線引きをして、重要業務を継続していける方策を見極め、それを着実に実行することが大切だ。また、これまでテレワークがなかなか進まなかったが、今回の感染防止対策をきっかけに働き方改革として定着することも予想される」

―次は社内で感染者が出てしまった場合について。その間の事業継続はどうしたらいいでしょう。

「現状は感染防止が何より重要なので、事務所の閉鎖、消毒といった対応になるが、今後、感染者数がどんどん増加する場合も想定される。そうなると感染者が1人出たからといって事務所全体を閉鎖することは困難になる。感染者の周囲を消毒したり、必要な感染防護措置をとったりした上で重要事業を続ける、という対応に移行する段階が来る。感染症対策では、最初は感染防止対策を全面的に実施するが、次第に事業継続とのバランスを取る必要が出てくる。ただ、今回の新型コロナウイルスの特性がまだよくわかっていないので、そういう時期がいつ頃になるか明確には言えない」

積極的な情報公開

―社内から感染者が出た場合、会社名や機関名は自ら公表せざるを得ないでしょうか。

「判断は難しいが、今の段階だと積極的に公表するべきだろう。もう少し段階が進み、多くの感染者が近隣に存在するようになると、その段階ではあえて公表しても意味がないかもしれない。ただし、接客業のように人と接する仕事、あるいは濃厚接触による感染に注意しなくてはならないような業種だと、社員の感染を公表しない場合、隠蔽(いんぺい)と受け取られ風評被害にもなりかねない。業態によっても対応が違ってくる。感染者のいた場所や経路、会社としての対応を率先して社会に発信する方がのぞましい」

有事想定の経営訓練

―パンデミック宣言が出たことで、感染が終息するまで長期化することも想定されます。

「大地震やパンデミックといった状況でも自分の会社がつぶれないように重要業務を選定し、事業を継続させるのがBCP。今BCPができていない場合、まずは、あらゆる手段を講じて何とか終息まで乗り切ることだ。ただ、BCPは作りっぱなしではダメで、発災時を想定した訓練が大事になる。訓練といっても避難訓練のような実働訓練ではなく、さまざまな状況に対して正しい経営判断を下せるかという訓練が大切だ」

「BCP訓練を実施する企業は増えてきたが、地震を想定したものが多く、パンデミックを想定した訓練をしている会社はあまりない。今回は、多くの企業にとって、いきなりの実体験となってしまったが、その経験から得られた教訓を生かし、地震や洪水、パンデミックなどあらゆる事態を想定した上でBCPをもう一度根本から見直す、BCPがなかった企業は策定する―それが感染終息後、企業として取り組むべき必須の活動となる」。

日本防災産業会議のウェブサイト

(2020/3/23 05:00)

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