モノづくり日本会議 AI研究会 第2回勉強会「ニューノーマル時代で企業が成長するためのAI活用」

(2021/4/14 05:00)

モノづくり日本会議は2月24日、AI研究会第2回勉強会「ニューノーマル時代で企業が成長するためのAI活用」をオンライン開催した。デジタル変革(DX)が急速に進む中、人工知能(AI)技術は中核技術として期待されている。AIを本格導入する際の課題について考えた。

データ主導経営の意思決定支援

アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部AIグループ 日本統括AIセンター長 マネジング・ディレクター 保科学世氏

コロナ禍で社会のDXは急速に進展し、AI技術がその中核として、社会の幅広い分野に浸透し、変革をもたらす。AIを使いこなすことが国や産業の強さ、社会の住みやすさにつながる。企業がAIというニューノーマルを本格的に導入するためのポイントや課題について話したい。

私はアクセンチュアでAIやデータ分析のビジネス活用を進める部署を統括し、多くの企業の業務変革を支援している。今日、世界人口の半数以上がインターネットにアクセスし、テクノロジーが日々の生活に重要な役割を果たしている。コロナ禍により生活のデジタル依存はさらに高まっている。

人間が五感を持つように世の中の事象を読み込み、そのデータを分析・理解し、意思決定し実行する。また、実行した結果を受け、学習して進化する。こうした機能を持つものをAIと定義したい。

企業活動の面でいうと、2020年の世界の企業の時価総額ランキングでは、1位の米アップル、3位の米マイクロソフトなど10社中8社が、AI技術がビジネスやサービスの主軸となっている企業だ。企業が成長するにはAI技術の活用が必須となっている。

成長に必須

グローバルの企業経営者1500人を対象とした意識調査でも、84%が成長目標達成にはAIを活用すべきだと考えているが、76%が本格的に拡大するのに苦労している、と回答した。日本でも同様の回答で、経営者は企業の生き残りにAIが必須だと考え、試し始めているが、活用方法が見えてこないのが現状だ。

導入の壁としては、まず顧客体験や業務全体を踏まえたサービスができていないこと、実業務に適したAI技術やプレーヤーを選定できていないこと、さらに周辺機能を含めたシステム全体像が描けていないこと、などがある。当社では、各業務領域の専門家やシステム構築の専門家とチームを組んで導入を進めている。AIと人、それぞれの得意領域を理解することも大切だ。

当社が実際に構築し、お客さまに導入してきたAIサービス「AIパワードサービス」を紹介する。多様なAI技術を配置し、全体を統括管理するプラットフォームを持ち、その上にさまざまな業務に対応するサービスを構築している。

経営や、顧客との接点、製造など多岐にわたり、例えば「AIパワードサプライチェーン・マネジメント」は、AIによる需要予測、予測に基づく計画最適化、作業の省人化・無人化など、サプライチェーン全体の最適化までカバーする。需要予測からの自動発注や在庫最適配置、価格最適化なども活用されている。プラットフォーム上のサービスは単独でも動くが、有機的につながり、一体となって業務を支える。

単純なタスクの自動化や予測に基づいた最適化は進んでいるが、AIは現場業務を支えるものから、経営を支えるものへと進化しつつある。各種経営指標を予測し、どうアクションを取るべきか推奨シナリオを提示する。客観的なAI予測により、属人化しがちな意思決定から、データ主導経営へと進められるよう支援する。

医療に活用

社会に貢献するAIの一つとしては医療における活用がある。国立国際医療研究センターとの共同研究での生活習慣病予測をはじめ、東京女子医大との共同研究での腎移植予後予測や投薬シミュレーションなどによって、より効果的な治療法を探っている。

医療現場のAI活用は慎重に行わなければならず、説明性も大事だ。AIが抱えるリスクも考えなければならない。権力の集中や、人間が作ったデータを学習したことによるAIの偏見、中身が理解できないまま依存してしまう透明性の欠如などがある。

何も考えずAIに従うことはリスクで、正しく使うスキルを身につけなければならない。当社は「責任あるAI」の本格活用を支援する体制作りを進めている。人材育成もセットで行い、育成後の人材のフォローアップ、最適なデータ収集アプローチなどが必要となる。何より、経営直轄で意思決定することが成功の近道だ。

責任ある活用へ人と融合

AIの活用には、人とのコラボレーション、融合が極めて重要だ。その上での重要な原則「MELDS」を紹介する。従来と異なるアプローチを考える「マインドセット」、失敗を前提として織り込んだ「実験(エクスペリメント)」、責任ある使用にコミットする「リーダーシップ」、鮮度を意識した上での「データ」、人間とマシンが融合するための「スキル」の頭文字を取ったものだ。

AIと人間は対立する存在ではない。人間に素晴らしい力を与えてくれるツールであり、共に新しい時代を築いていく。

(2021/4/14 05:00)

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