産業春秋／佐渡金山世界遺産へ高まる期待

佐渡おけさで「ハアー　佐渡へ来てみよ夏冬なしにヨ　山にゃ黄金の花が咲く」と歌われた「佐渡島の金山」（新潟県佐渡市）。政府は１日、２０２３年の世界文化遺産登録に向けユネスコへの推薦を閣議了解した。

あきらめムードが漂っていただけに島民の喜びはひとしおだ。電子部品製造や金属加工などの中小企業も登録を起爆剤に「交流人口が増え島が活気づいてほしい」と期待する。

１９６０年代に１０万人を超えていた島の人口は少子化や若者の流出で約５万人に半減。頼みの観光客も減少が続き、コロナ禍が追い打ちをかける。外国人観光客の回復は当面見込めそうにない。

製造業は輸送に不安を抱える。島と本土を結ぶ佐渡汽船は冬期に１隻体制で１日３往復へ減便になる。「便数増で製品の安定輸送につながれば」。佐渡工業会会長の林田広幸さんは登録に望みをかける。

島には猫が化けた美女の「ケサ」がおけさの語源との伝説がある。唄や踊りがうまく、飼い主のそば屋はにぎわいを取り戻す。登録はケサの再来となるか。「ハアー　度胸定めて乗り出すからはヨ　後へ返さぬ帆かけ船」。政府は文化遺産価値のぶれない訴求で国際交渉の荒海を乗り切りたい。