社説/揺れる大国経済(中)米、利上げ「副作用」に処方箋を

(2022/8/25 05:00)

バイデン米大統領にとって、自国経済の最大の課題は約40年ぶりという歴史的なインフレの抑制だ。だが先に成立した歳出・歳入法(インフレ抑制法)の効果は限定的とされ、金融市場は米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めの行方を注視する。課題は行き過ぎた利上げが景気後退を招く“副作用”の行方だ。米国は長短金利が逆転するなど先行きへの懸念が高まっている。米FRBは景気後退時の処方箋も示しつつ、慎重な政策運営が求められる。

バイデン政権は11月の中間選挙を見据え、大企業への課税強化などの格差是正策を盛り込んだインフレ抑制法を16日(現地時間)に成立させた。法人税や自社株買いなどへの課税強化による分配政策の推進、さらに米国としては過去最大とされる気候変動対策や薬価引き下げなども盛り、4300億ドル(約59兆円)規模の対策に仕上げた。

ただ共和党との調整を余儀なくされ、子ども・高齢者支援策などが削除された。インフレ抑制の効果は疑問視されており、当面は年内に3回残している米FRBの会合の行方を注視したい。6、7月には2会合連続で政策金利を通常の3倍に当たる0・75%引き上げ、9月20、21日の会合も0・5―0・75%の利上げ幅が想定されている。

7月の米国の消費者物価指数は前年同月比8・5%上昇と依然として高水準だ。一方、農業以外の就業者は前月比で52万8000人増え、市場予測を大きく上回っていた。米FRBは堅調な雇用情勢を根拠の一つに、金融引き締めをしばらく継続する見通しだ。ただ23日(現地時間)のニューヨーク債券市場で10年物国債利回りが3%台に達し、2年物国債利回りを上回る逆イールドの状況にある。

米FRBはインフレ抑制の時期、さらに景気後退に陥った場合の金融緩和への転換時期をどう見通しているのか。パウエル議長は世界の中央銀行や市場の関係者、エコノミストらが参加する経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」(米ワイオミング州)で26日(現地時間)に講演する。注視したい。

(2022/8/25 05:00)

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