社説/G7広島サミット(3)AI・気候変動、温度差に懸念

(2023/5/18 05:00)

先進7カ国(G7)の間で、対話型人工知能(AI)や気候変動問題への対応で温度差がみられる。対話型AIで厳格な規制を求める欧州に対し、米国は企業活動を制約する規制には慎重だ。気候変動対策では欧米に比べ対応が遅れている日本が踏み込めずにいる。議長国・日本は生成AIの国際ルールづくりを主導する一方、気候変動問題で浮き彫りになった日本の課題を早期に克服する必要がある。

G7は急速に普及する米オープンAIの対話型AI「チャットGPT」を念頭に、生成AIの可能性と同時にリスクへの懸念も表明する。データ収集の手法次第で個人情報の流出や著作権侵害、人権などに抵触する恐れがあり、民主主義の価値観を脅かしかねない。先のG7デジタル・技術相会合では、生成AIのリスクを評価する国際ルールづくりと同時に、国境を越えたデータ流通の円滑化「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」実現に向けた枠組みを創設することを表明した。

ただ欧米ともに生成AIへの規制の必要性では認識が一致するものの、規制のあり方については各国で見解が異なる。広島サミットでは日本主導で国際ルールづくりを目指す「広島AIプロセス」を打ち出すという。AIで欧米に出遅れた日本ながら、議長国として議論を主導し、この分野で巻き返したい。

一方の気候変動問題。G7気候・エネルギー・環境相会合では、欧州各国が求める石炭火力発電所の廃止時期は示されず、電気自動車(EV)の数値目標の設定も見送られた。日本は発電の3分の2を化石燃料に依存し、EV化も欧米に後れを取る。議長国といえども踏み込めなかった。広島サミットを出遅れを挽回する契機としたい。

2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故後、原発再稼働が進まず、再生可能エネルギー対策も欧州より遅れている。大手電力7社が家庭向け規制料金の大幅な値上げに動くのはウクライナ情勢や円安だけが原因ではない。再生可能エネの主力電源化と安全を確認できた原発再稼働の歩みを進めたい。

(2023/5/18 05:00)

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