T2、26年に自動運転輸送サービス 東京―大阪間 AIで精度向上

(2023/11/9 12:00)

人手不足や、運転手に時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」が叫ばれて久しい。2030年に15年比で全国の約35%の荷物が運べなくなる指標がある中、課題解決に挑むのは、22年設立のT2(千葉県市川市、森本成城社長)だ。T2は特定条件下で運転を完全に自動化する「レベル4」対応の「幹線輸送自動運転トラックサービス」の26年の事業化を目指す。安全性を左右する自動運転の精度向上には高度な人工知能(AI)技術が欠かせない。

  • T2の実験車両。台数を増やし、教師データを増やしてAI精度を向上させる

T2が目指すサービスは東京―大阪間の長距離輸送で、使用する高速道路の入り口付近に「出発切り替え拠点」、出口付近に「到着切り替え拠点」をそれぞれ設け、両拠点間を完全自動運転で運行する。運転手による輸送は出発地の倉庫から出発切り替え拠点までと、到着切り替え拠点から最終目的地までの区間のみ。サービスが普及すれば人は域内配送に専念でき、長時間労働の削減につながる。

T2は車載カメラ、レーダー、高機能センサー「LiDAR(ライダー)」などから得られるデータに加え、速度など車両情報を統合し周囲の環境を高精度に認識する技術で、自動運転アルゴリズムの全てを内製化している。4月に実験車両で高速道路での自動運転トラックの自律走行に成功した。10月末時点で三井住友海上火災保険などから計54億5000万円の資金調達を実施。車両構築、人材採用に加え、AIモデルの改善とデータセットの拡張などに充てる方針だ。

  •     画像やLiDARデータを用いた物体認識モデルの結果

例えば100メートル先の障害物の検出精度を100%に近づけるには多くの教師データが必要だ。現在1台ある実験車両で週一回程度、東京―大阪間を往復している。森本社長は「実験車両を増やし、倍々でデータが取れるようにする」とAIの精度向上を急ぐ。自動運転では事故・工事現場などをAIが把握し車両を回避させる必要がある。走行回数を増やせばこうした重要シーンへの遭遇確率も上がり、より大規模なデータセットを構築できる。

事故現場などを録画データから人の目で判断して抽出し、データセットに加えているが辻勇気技術開発部門長は「AIモデルが自動で判別してデータセットに加える仕組みを構築したい」という。

一般道に比べ、歩行者や信号認識の必要性が少ない幹線道路のサービスに特化することで、技術開発の項目を絞り、事業化を早められる。森本社長は「31年に2000台の自動運転トラックを保有しビジネスを展開する」とし、パートナーとともに物流を支えていく。

(2023/11/9 12:00)

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