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第47回日本産業技術大賞(下)審査委員会特別賞−エヌ・ピー・シー

(2018/3/26 05:00)

  • 開発したリサイクル装置

  • ガラスから分離した太陽電池材料

■ホットナイフ分離法を用いた太陽光パネルのリサイクル

【40年廃棄5000万枚/待望の効率的処理】

2017年11月、浜田(大阪府高槻市)のリサイクル工場(東京都大田区)でエヌ・ピー・シー(NPC)の太陽光パネルリサイクル装置が稼働した。太陽光パネルを投入するとガラス板が出てくる。その下には巻物のような黒いシートがある。シリコン製セル、樹脂製の封止材と保護膜が一体となった太陽電池材料だ。

太陽光パネルは屋外で長期間使うため、ガラスと材料が密着している。この設計が分離を困難にし、リサイクルの障壁となっていた。NPCは200度C以上に熱した刃物「ホットナイフ」を使い、ガラスから材料をはがす技術を確立した。ガラスはガラス素材として再利用でき、シートは精錬して金属を回収できる。

14年、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による研究プロジェクトに参加し、分離技術の開発を始めた。さまざまな刃物を試すうち、温めた刃物だと材料をはぎ取れた。矢内利幸常務は「思った以上に早く、分離方法が分かった」と振り返る。

ただし、1メートルの長い刃物だと熱膨張でたわみ、ガラスから樹脂をきれいにはぎ取れない。刃物を分割し、変形があっても精度を保てるようにした。刃物を固定する台の剛性も高め、反りの発生を抑えた。

それでも50枚ほど処理すると刃先がかける。NEDOの目標は太陽光パネルの出力1ワット当たり5円。刃物の交換が多いと費用がかかり、目標に到達しない。刃物の材質、皮膜などを変えて試したいが廃棄パネルが集まらず、テストができない状況もあった。3年がかりで最適な刃物を見いだし、1枚50秒の処理速度を実現して5円以下を達成した。すでにリサイクル工場で3000枚を処理した。「数をこなすと分かってくることもある」(矢内常務)とさらに改良を続ける。

(編集委員・松木喬)

【技術プロフィル】

エヌ・ピー・シーは1992年設立の太陽電池製造装置メーカー。14年に太陽光パネルのリサイクル技術開発に着手した。環境省は40年に80万トンの太陽光パネルの廃棄が発生すると試算している。パネルに換算すると5000万枚。リサイクル技術がないと将来、埋め立て処分場の不足が予想され、パネルを効率よく分解する技術が求められていた。

(2018/3/26 05:00)

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