(2021/10/22 05:00)
景気回復へのテンポが弱い日本経済にとって、物価上昇を招く足元の円安基調は「悪い円安」と言える。長期化すれば改善傾向にある企業業績への影響が懸念される。新たに打ち出す経済対策を、日銀の金融正常化にもつなげてもらいたい。
円ドル相場は3年ぶりの円安水準である1ドル=114円前後で推移している。米連邦準備制度理事会(FRB)が11月にもテーパリング(金融緩和からの出口戦略)を開始することから米長期金利が上昇する一方、日本は原油高などエネルギー価格の上昇が貿易収支の悪化を招くと市場関係者は見立てる。日米金利差の拡大が円安基調につながった。
これまで輸出依存の日本はむしろ円安を誘導し、日銀はマイナス金利政策まで講じて2%の物価上昇目標の実現を目指している。だが皮肉にも、その円安が原油など高騰しているエネルギーの輸入価格をさらに押し上げ「悪い物価上昇」を誘発している。緊急事態宣言の解消で回復傾向にある個人消費の拡大に水を差す事態である。
9月の輸入物価指数は前月比で30%超も上昇した。この上昇基調が継続するようなことになれば企業収益は一気に悪化しかねない。
コロナ禍が収束しない中で、日本は半導体不足などのサプライチェーン(供給網)問題に円安、原油高の二つの課題が重なる。WTI原油先物は、石油輸出国機構(OPEC)プラスが11月の増産を見送り、当面1バレル=80ドル台近辺の高水準で推移するとの見通しが有力だ。
日銀は経済成長を伴う「良い物価上昇」が進まず、黒田東彦総裁の在任中は、マイナス金利政策が継続されると市場は織り込んでいる。
総選挙後の政権は、数十兆円規模の経済対策で、足元の景気を下支えるが、回復傾向にある企業収益を側面支援するだけでは不十分だ。経済対策に盛り込む成長戦略を着実に進めることが、日銀の金融政策正常化への布石となる。産業界が望むのは、行き過ぎた円安でも円高でもなく為替の安定である。
(2021/10/22 05:00)
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