社説/防衛費5年43兆円(下)「反撃」装備も対中外交に注力を

(2022/12/8 05:00)

自民、公明両党は、敵のミサイル発射拠点などをたたく「敵基地攻撃能力(反撃能力)」を保有することで合意した。専守防衛を掲げてきた日本の防衛政策を転換し、東アジア情勢の一段の緊迫化に備える。ただ反撃能力の性能や抑止効果が不透明なほか、反撃のタイミングを誤れば国際法違反の先制攻撃とみなされる。日本の安全保障を担保し、適切に運用できるのか。国民への十分な説明はもとより、隣国・中国との意思疎通を間断なく行うことこそ肝要だ。

反撃能力は国際法を順守し、「必要最小限の防衛措置」との位置付けで、専守防衛の理念から逸脱しないと判断した。敵が攻撃に「着手」した後、政府は反撃の理由などを記した「対処基本方針」を閣議決定し、国会で承認を得た上で実行に踏み切る。何をもって「着手」と見なすかは「個別具体的に判断」するとし、あいまいさも残した。

中国や北朝鮮は変則的な軌道を描くミサイルなどを装備し、日本のミサイル防衛網では限界がある。北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、中国の軍事演習では弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に落下し、台湾有事が日本の安保を脅かすことを突き付けた。米国に世界を動かす力はなく、日本がすぐそこにある危機に備えるのは当然と言える。

ただ課題は少なくない。敵が攻撃に「着手」したとの見極めは容易でない。敵のさらなる攻撃を抑止できるだけの効果を期待できるかも不透明で、むしろ緊張を高めかねない。防衛3文書の改定をめぐる議論は防衛費や防衛能力の協議が先行し、反撃に関する戦略に不透明さを残している。適切な運用に向けた審議を深める必要がある。

中国は領土や人権問題で一歩も譲歩しないものの、外交の扉は開いている。西側諸国による北朝鮮への経済制裁の抜け道になるなど北朝鮮への影響力も大きい。日本が米中に続く世界3位の軍事大国になるだけでは東アジアの緊張は緩和しない。中国との外交に力を注ぎ、対話の継続により安全保障を確保することに戦略の主眼を置きたい。

(2022/12/8 05:00)

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