社説/日銀新総裁の重責(下)政府は構造改革と財政目配りを

(2023/2/15 05:00)

政府は14日、日銀の次期正副総裁の人事案を国会に提示した。総裁候補の植田和男氏(経済学者、元日銀審議委員)は、当面は異次元金融緩和を維持する意向を示しつつも、中期的には金融緩和の縮小、さらには金融引き締めへの転換を探ることが想定される。日銀の金融政策の正常化を後押しするため、政府には構造改革と財政健全化への一段の目配りが求められる。

金融緩和だけでデフレから脱却できないのは、この10年の異次元緩和の実績を見れば明らかだ。政府は構造改革を推進し、0%台前半の潜在成長率を引き上げる必要がある。低成長下で蓄積された内部留保や貯金といった滞ったマネーを、金融緩和と構造改革の両輪で動かすことが求められる。持続可能な賃上げを促す人的投資やイノベーションを進め、企業と家庭のデフレマインドを解消したい。

植田氏が中長期的に金融緩和の縮小、さらに出口戦略に動けば、政府は安心して大量発行できた国債の引き受け先を失う。日銀の国債保有残高は2022年末に564兆円に達し、発行残高のほぼ半分を占める異常事態にある。日銀の異次元緩和は結果的に政府の財政規律を緩める副作用を招いた。だが日銀が緩和政策を見直せば国債購入額は減り、政府に財政健全化を促す契機になると期待したい。

政府は利上げ局面で国債費の負担も膨らむ。金利が1%上昇すると、政府による国債の元利払いは25年度ベースで想定より3・7兆円増加するという。政府は金融正常化を見据え、現実的な財政健全化計画を今から策定することが求められる。

アベノミクスと異次元緩和の継続を訴える自民党内には「当面、緩和維持」を支持する植田氏を歓迎する声が聞かれる。だが金融市場では想定したほど金融緩和重視のハト派ではないとの見方も広がる。令和国民会議(令和臨調)は異次元緩和の検証・修正を求め、国際通貨基金(IMF)も長期金利の上限に柔軟性を持たせることを選択肢に掲げる。植田氏は下旬に行われる国会での聴取・質疑で、所信を明確に示してほしい。

(2023/2/15 05:00)

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