(2023/3/7 05:00)
韓国政府は6日、懸案の元徴用工問題をめぐり、韓国大法院(最高裁)が日本企業に命じた賠償を韓国側が肩代わりする解決策を発表した。日韓の関係改善が進み、東アジアの安全保障を強化するものと評価したい。ただ韓国では野党や市民団体などに反発もみられ、2015年の元慰安婦問題合意のように破棄される懸念も残る。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は国民への説明を尽くし、関係改善を実現したい。
解決策は、原告への賠償は実施しつつ、日本にも配慮した内容だ。韓国政府傘下の財団が日本企業の賠償を肩代わりする一方、日本は岸田文雄首相が歴史問題への「反省と謝罪」の継承を表明する。日本は65年の日韓請求権協定で賠償問題は「解決済み」との立場で、新たに謝罪する考えはない。その意味で日本には受け入れ可能な策と言え、日韓関係改善を目指す尹大統領の政治決断を評価したい。
日韓の経済界が連携し、留学生への奨学金支給など若者の交流も促進するという。日本企業にとっては“賠償”とは異なる資金拠出となるため協力しやすい。日本も東アジアの安保を勘案し、一定程度は韓国に歩み寄る政治判断が求められる。
韓国は尹大統領が22年5月に就任し、5年ぶりの保守政権になったことで対日、対北朝鮮戦略が大きく転換した。日韓の関係改善に意欲を示し、対北朝鮮は抑止を強めている。バイデン米政権の意向を受けたものでもある。岸田政権は5月の先進7カ国(G7)広島サミットに尹大統領を招待することを検討しており、強固な日米韓同盟を基軸に民主主義国の結束を世界に発信できる意義は大きい。
ただ懸念も残る。今回の解決策が韓国世論の批判で修正されないか、保守政権の尹政権の退陣後に合意が反故(ほご)にされることはないのか。日韓議員連盟の新会長に菅義偉前首相が就任する。首相経験者の就任は、日本が日韓関係を重視しているとの韓国へのメッセージでもある。今回の解決策を最終的かつ不可逆的な解決とするには、韓国が約束を守り、日韓が信頼をどこまで深められるかによる。
(2023/3/7 05:00)