社説/児童手当の所得制限撤廃 政策転換、財源と効果の検証を

(2023/3/27 05:00)

政府は月末にまとめる少子化対策のたたき台に、児童手当の所得制限撤廃を明記する。高所得者も給付対象とすることで、少子化是正への機運を醸成する狙いとみられる。ただ統一地方選挙を意識し、有権者に分かりやすい政策が強調されたとの指摘もある。所得制限撤廃にどれほどの効果を期待できるのか、後回しにされた財源問題と合わせて検証する必要がある。

現行の児童手当は15歳(中学生)までの子どもがいる世帯に月1万―1万5000円を支給。夫婦いずれかの年収が960万円以上なら月5000円に減額し、1200万円以上には支給しない所得制限がある。こうした制限を撤廃するほか、複数の子どもがいる場合は給付額を第1子より加算。給付の対象年齢も15歳から18歳に上げる。開始時期や第何子から給付額を加算するかは決まっていない。

懸念されるのは所得制限撤廃を有権者が必ずしも支持していない点だ。不支持割合の方が多い全国紙の世論調査が散見される。高所得者優遇のバラマキと受け止めている可能性がある。児童手当支給の対象となる高所得者は中高年が多く、子育て世帯が少ないとの指摘もある。

自民党は民主党政権下で反発した所得制限撤廃を復活させ、政策を180度転換した。政府・与党は今後、財源と効果を含めて決断の経緯を国民に丁寧に説明することが求められる。

2023年度予算案の児童手当は2兆円弱。所得制限撤廃で新たに約1500億円、支給対象年齢の18歳への引き上げで約4000億円の財源が必要だ。多子世帯への給付増額の内容次第では数兆円の予算規模に達するとの試算もある。政府は防衛費増額の財源確保を優先し、少子化対策の予算規模や財源の議論を後回しにした。6月の経済財政運営の基本方針(骨太方針)に説得力のある少子化対策を盛り込めるかを注視したい。

少子化対策は「給付」ばかりでなく、若者の経済基盤を強化するための働き方改革などとのバランスが求められる。実効性ある労働市場改革の推進も岸田文雄政権には求められる。

(2023/3/27 05:00)

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