社説/米債務上限問題 政治対立より金融安定優先せよ

(2023/5/24 05:00)

米債務上限問題は、民主・共和両党が2024年の大統領選挙を見据え、互いに譲らない“チキンレース(根比べ)”の様相を呈している。6月1日とされる債務不履行(デフォルト)まで残された時間は少ない。両党は非生産的な政争に終止符を打ち、金融システム安定化に万全を期してもらいたい。

バイデン米大統領は23日(日本時間)、野党・共和党のマッカーシー下院議長と3回目の会談に臨んだものの、米連邦債務の上限(発行できる国債の上限)引き上げで折り合えず、継続協議となった。債務上限を引き上げる代わりに歳出削減を求める共和党に対し、バイデン大統領は1兆ドル(約138兆円)以上の削減策を提案したものの、共和党は受け入れなかった。

共和党は、歳出歳入法(インフレ抑制法)に盛り込まれた再生可能エネルギーや電気自動車(EV)への税額控除の廃止または修正を求める。バイデン政権の目玉政策を後退させる狙いだ。共和党はトランプ前大統領を支持する勢力を交え、一枚岩ではない。マッカーシー下院議長が共和党内の強硬論を封じ込めず、民主党との妥協点を見いだせないのではと懸念される。

デフォルトを警戒して米株式市場が大幅下落すれば、両党は慌てて一気に折り合うとの指摘もある。だが、そこまでの下落はみられない。協議が難航を続け、バイデン大統領は議会承認が不要な合衆国憲法修正第14条を発動し、債務上限を引き上げる奇策を打つかも注視したい。

米国で金融不安がくすぶる中で初のデフォルトとなれば、金融市場は大混乱する。米国債の格下げと米長期金利の上昇により金融不安が増幅され、金融機関の経営破綻を恐れた預金者による預金の流出や、経済減速による雇用の喪失も想定される。デフォルトは長期化しない限り、影響は限定的との見方があるものの、日本は株安・円高の進行に警戒が必要だろう。

民主・共和両党が政治決着さえすればこうした事態を招かずに済む。両党は建設的な協議で歩み寄り、デフォルトのリスクを直ちに解消してもらいたい。

(2023/5/24 05:00)

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