社説/NTT法見直し 利用者目線で公正な競争環境を

(2023/9/6 05:00)

政府と自民党が通信政策のあり方を議論している。焦点はNTT法を見直し、NTTに対する規制を緩和するかどうかだ。米中に劣る情報通信分野の国際競争力を高めるにはNTTの経営自由度を高め、業界をけん引してもらう役割が期待される。ただ業界内の公正な競争環境を損ねてはならない。利用者目線で、通信業界が健全に発展する道筋を模索してもらいたい。

他方、NTT法の見直しはNTTの国際競争力強化に加え、政府のNTT株売却による防衛財源確保や経済安全保障の観点からも議論される。ただ株の売却は恒久財源とならず、通信政策とも結び付かない。防衛問題とは切り離し議論を深めたい。

自民党は11月にも提言を、総務省の情報通信審議会(総務相の諮問機関)は2024年夏をめどに答申を取りまとめる。

1984年のNTT法施行から約40年。この間、固定から移動へと通信環境は劇的に変わり、IT業界は米国の「GAFA」や中国勢が席巻する。NTT持ち株会社と固定通信のNTT東西を規制するNTT法は時代遅れの感があり一定の見直しは必要だ。ただNTT以外の通信各社にも目配りし、電気通信事業法(電通法)の運用を厳格化し、公正な競争環境をこれまで以上に担保する必要がある。

NTT法は研究開発成果の公開の義務付け、政府による発行済み株式3分の1以上の保有、全国一律の固定電話サービス提供(ユニバーサルサービス)などを求める。研究成果の公開はNTTの国際競争力を阻害するため見直したい。一方、政府のNTT株売却は懸念国に株を買われる経済安保の問題がある。既存の外資規制で対応できるか不透明で、慎重に議論したい。

電電公社時代の電柱・管路などを継承したNTTは固定通信回線の大部分を設置し、移動通信サービスに必要な光ファイバー回線数もNTT東西が7割以上のシェアを握る。NTT以外の通信会社は必要な回線をNTT東西から借りる。こうした状況を勘案し、ユニバーサルサービスをどの企業がどの通信手段で担うのか議論を深めたい。

(2023/9/6 05:00)

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