社説/同意なき買収 企業価値向上へ選択肢の一つに

(2023/9/20 05:00)

経済産業省は「同意なき買収」の当事者に求められる行動指針を策定した。買収する側、買収される側双方の企業価値向上や株主利益に資する買収を「望ましい買収」と位置付け、そうした買収の提案を受けた企業は真摯(しんし)に検討するよう求めている。経営者の保身などを目的とした買収防衛策の乱用を防ぎ、日本企業の低い資本効率を引き上げる効果が期待される。

ニデックによる工作機械メーカー・TAKISAWAの買収劇が、同意なき買収の呼び水となるか注視したい。産業界の新陳代謝が促される効果も期待され、企業価値を向上させる選択肢の一つと位置付けたい。

経産省は8月末、M&A(合併・買収)の健全な発展を目的に「企業買収における行動指針」を策定し、上場企業の経営支配権を取得する「同意なき買収」のあり方を示した。同買収は対象企業の取締役会での賛同を得ずに行う買収で、これまで敵対的買収と呼ばれていた。

対象企業が講じる買収防衛策について、最高裁判決は真摯な買収提案に対する防衛策の行使を認めず、企業と株主の利益を損ねる買収提案への防衛策は容認する。経産省の行動指針はこうした訴訟を回避し、M&Aを円滑化する効果も期待できる。

行動指針は、真摯な買収提案については速やかに取締役会に付議するなどの対応の検討を求める。買収する側は、買収目的などの情報開示を適切に行い、対象企業に十分な検討時間を与える必要性を示している。

買収側は対象企業と十分な協議を重ねて理解を得るのはもちろん、対象企業の株主への説明責任も果たしたい。買収提案を受けた企業は、社外取締役の客観的な視点も踏まえて適切に判断する必要がある。双方はわだかまりを残さず、シナジーを発揮できる関係を築きたい。

TAKISAWAはニデックの同意なき買収に賛同し、株式の公開買い付けが始まった。シナジーや企業価値の向上を見込め、買い付け価格も適切なプレミアムが付与された。最終的には友好的な買収に昇華されており、この事例を参考にしたい。

(2023/9/20 05:00)

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