社説/G20「中東」言及せず 分断下の戦況・世界経済に警戒

(2023/10/16 05:00)

13日に閉幕した主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、7会合ぶりに共同声明を採択したものの、緊迫化する中東情勢に触れなかった。G20には中ロやサウジアラビアが含まれ、世界の分断が中東情勢でも鮮明になった。イスラエルが地上侵攻に動けばイランが戦闘に介入し、中東情勢が一気に緊迫化する可能性がある。原油高騰で世界経済が混乱しかねず、戦闘の行方に警戒したい。

モロッコ中部のマラケシュで開かれたG20財務相・中銀総裁会議では、中東情勢が世界経済に及ぼすリスクを懸念する指摘が相次いだものの、共同声明に盛られなかった。ウクライナ情勢でもロシアを名指しで批判せず、領土取得を目的とした武力による威嚇や武力行使をけん制する表現にとどめていた。

G20に先立って12日に開かれたG7財務相・中銀総裁会議では、イスラム組織ハマスによる攻撃は民間人を殺害し人質にも取る「テロ」と強く非難し、イスラエル支持を表明した。G20とは対照的な共同声明だ。ウクライナ情勢で鮮明になった世界の分断が、中東情勢でその輪郭をさらに明確にしかねない。

ハマスによるイスラエルへの奇襲は、弾圧に対する積年の恨みに加え、イスラエルがアラブ諸国と関係正常化を進めたことが背景にある。米国の仲介で20年にイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が関係正常化したのに続き、米国はイスラエルとサウジアラビアの国交正常化も目指していた。ハマスは中東での孤立を警戒したとされる。

他方、中国は3月にロシアの友好国であるイランとサウジアラビアの国交正常化を仲介し、中東での存在感を高めている。そのイランはイスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区への地上侵攻に動けば戦闘に介入する可能性を示唆する。緊迫化する中東情勢が世界の分断をさらに鮮明にし、原油高騰などを招けば欧米の金融引き締めが長期化し世界経済が減速しかねない。ロシアや中国はパレスチナを擁護し、欧米とは一線を画すものの即時停戦に向けた国際的な圧力は継続して強めていきたい。

(2023/10/16 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン